脱原発、電力自由化、再エネ推進の影響で電気代が上がり続けてきた日本。2024年の夏は10年に一度の暑さと言われ、電気代の高騰が懸念されました。補助金はなくなったかと思えば再開されたりと、場当たり的な対策ばかりで問題の本質がとらえられていないように感じます。
世界に目を向けても、欧州エネルギー危機やウクライナ戦争の影響でエネルギー不足や電気代上昇が続いています。人の命や生活から国の政策まで、広く関わるからこそ、Wedge ONLINEでは問題の本質について考え続けてきました。
今年一年どのような出来事があったのか、それらを今一度振り返ることで今後進むべき方向が見えてくるのではないかと思います。2025年に道を間違えないため、2024年に掲載されたエネルギーや電力に関する記事6選をご紹介します。
<目次>
1:【どうなる日本のエネルギー政策】連立・政策協議によっては経済も生活も行き詰まる、ドイツの脱原発路線から問う(2024年11月5日)
2:トランプ「掘って、掘って、掘りまくれ」は地熱も?シェール革命の技術転用の可能性、日本にも追い風か(2024年12月4日)
3:〈なぜ、日本製鉄はUSスチールを買収するのか〉米国鉄鋼市場だけではないエネルギー価格という側面(2024年10月9日)
4:【日本は地熱大国になれるか?】世界が羨むポテンシャル 純国産エネルギーで「地熱革命」を起こせ(2024年8月19日)
5:<脱炭素で思考停止する日本>注目すべき中国の石炭火力低炭素化への戦略とは?(2024年8月23日)
6:「我慢せず冷房を」って言うけれど…政府支援5000億円の衝撃、日本を襲う停電危機と電気料金上昇で私たちの暮らしと産業はどうなる?(2024年7月18日)
1:【どうなる日本のエネルギー政策】連立・政策協議によっては経済も生活も行き詰まる、ドイツの脱原発路線から問う(2024年11月5日)
自民党・公明党を中心とした政権か、立憲民主党を主体にする政権に変わるのか。11月11日に開催予定とされる特別国会での首相指名選挙に向け、さまざまな動きが報道されているが、主要な政策が一致しなければ連立内閣は短命に終わる。
主要政策が一致する内閣が今回はたして誕生するのだろうか。少なくとも一致が必要な政策の一つはエネルギーだろう。
自民党と立憲民主党は、共に脱炭素を目指しているが、原子力発電の活用についての政策は大きく異なり、加えて太陽光発電設備などの再生可能エネルギー(再エネ)の導入により電力供給の100%を賄うのか両党の考えは違う。
エネルギー政策はエネルギー価格と供給に影響を与え、結果として経済と生活も異なる道筋を辿ることになる。それだけに、異なるエネルギー政策を持つ政党が連立を組むことは難しい。
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【どうなる日本のエネルギー政策】連立・政策協議によっては経済も生活も行き詰まる、ドイツの脱原発路線から問う
2:トランプ「掘って、掘って、掘りまくれ」は地熱も?シェール革命の技術転用の可能性、日本にも追い風か(2024年12月4日)
米国のエネルギー業界では、多くの経営者は共和党支持、組合員は民主党支持だが、温暖化問題が政策課題に浮上してからは、その構図は選挙のたびに揺れている。
民主党と共和党の支持者では、温暖化問題に関する考えが大きく異なり、温暖化対策を重視する支持者を抱える民主党候補は、温暖化対策を政策の大きな柱の一つとして打ち出した。
化石燃料の消費を減らし、実質的に温室効果ガスの排出量ゼロを目指す「脱炭素」が民主党の目標となった。たとえば、バイデン政権は、2035年に電源の脱炭素化、50年温室効果ガスの実質排出量ゼロを目標としている。
化石燃料生産に係る労働組合は、オバマ元大統領が温暖化対策を打ちだし、脱炭素を推進し始めた2000年代から、徐々に民主党離れを進めた。炭鉱労働者の組合である全米鉱山労組(UMWA)は、16年の大統領選では支持政党なしの立場を打ち出し石炭の復権を掲げたトランプ支持に回った。
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3:〈なぜ、日本製鉄はUSスチールを買収するのか〉米国鉄鋼市場だけではないエネルギー価格という側面(2024年10月9日)
日本製鉄のUSスチール(USS)買収提案がニュースで取り上げられる時に、USSビルの映像が流れることがある。
筆者が米国で働いていた時の勤務場所は、ペンシルバニア州、ピッツバーグのUSSビルの28階にあった。64階建てのUSSビルは、シカゴとニューヨークの間にある、もっとも高いビルだ。上層階にはUSSとその関係会社が入居しており、取引先でもあったので、時々エレベーターを乗り換えお邪魔していた。
米国企業の人材流動性は高いと思われているが、USS、ゼネラル・モーターズ(GM)、ゼネラル・エレクトリック(GE)などの歴史ある大企業では、幹部の大半は生え抜きで占められていた。USSも例外ではなかった。
筆者が時々会っていた幹部は、部屋に出身大学のペナントを掲げ、社会人になってからUSS以外の会社で働いていないことを誇りに思っているようだった。
最近は米国の重厚長大企業でも外部から最高経営責任者(CEO)を招くことも増えている。USSのデビッド・ブリッドCEOもキャタピラーでの32年の勤務後USSに移籍している。米国の伝統ある企業の風土も変わったのかもしれない。
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4:【日本は地熱大国になれるか?】世界が羨むポテンシャル 純国産エネルギーで「地熱革命」を起こせ(2024年8月19日)
JR盛岡駅から車を走らせること約80分。山道を縫うように進んだ先に、雄大な自然と調和したウグイス色の発電所棟と茶色の配管網が姿を現した。標高1130メートルに位置する安比地熱発電所(岩手県八幡平市)に到着すると、7月下旬にもかかわらず、半袖のシャツでは肌寒さが感じられた。
出力1万4900キロワット(kW)を誇る同発電所は、今年3月に営業運転を開始した。しかし、地質の調査開始から運転開始に至るまでに四半世紀の年月を要した。安比地熱(同前)の菅野雄幸社長は「既存の地熱開発の難点は、最低10年以上というリードタイムです。地熱資源の調査や環境評価、井戸の掘削、発電所の建設など、越えるべきハードルは多い」と話す。
また、地熱発電の特有の仕組みが開発リスクを高めている。その仕組みはこうだ。地下1000~3000メートルまで浸透した雨水がマグマで加熱され熱水となり、岩盤の下やそのすき間に蓄えられることで「地熱貯留層」を構成する。ここに向けて井戸(生産井)を掘り、熱水や蒸気をくみ上げタービンを回している。しかし、地熱貯留層を掘り当てることは容易ではない。安比地熱の兼子高志技術部長は「生産井を1本掘削するのに数億円のコストがかかります。事前に調査していても実際に掘削すると、貯留層に当たらない場合もある」と話す。
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5:<脱炭素で思考停止する日本>注目すべき中国の石炭火力低炭素化への戦略とは?(2024年8月23日)
5月に寄稿した論稿「【中国は石炭消費を減少させない】IEAの2023年石炭ピーク見通しが実現しない理由、日本は動じず石炭火力の低・脱炭素化を」で、筆者は中国の石炭消費が昨年、2023年にピークをつけて今後減少していくとする国際エネルギー機関(IEA)の見通しは起こり得ないと結論付けた。中国では石炭火力が依然として安定的な電力供給に重要な役割を果たしており、中国政府も2010年代後半に進めた性急な脱石炭政策を見直していることもあり、石炭消費は当面減少しないと見るためだ。
中国に限らず、多くの途上国では低廉で安定供給可能なエネルギーが経済発展に必要であり、再エネの主力電源化は支持を得ることができず、むしろ石炭火力の低・脱炭素化こそが、今後のイノベーション次第では、現実的な気候変動対策であるとの見方を示した。
果せる哉、7月15日に中国の国家発展改革委員会と国家能源(エネルギー)局は「石炭火力の低炭素化の改造建設行動プラン(2024-2027年)」(以下、行動プラン)を公表。石炭火力にバイオマス・グリーンアンモニアの混焼、あるいは排出された二酸化炭素(CO2)を集めて地中深くに貯めるCCS(Carbon dioxide Capture and Storage)の導入を進める政策を打ち出した。
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6:「我慢せず冷房を」って言うけれど…政府支援5000億円の衝撃、日本を襲う停電危機と電気料金上昇で私たちの暮らしと産業はどうなる?(2024年7月18日)
東京電力と関西電力管内の電力供給量が7月8日に不足する可能性が生じ、中部電力などから電力の融通を受ける事態になった。猛暑により供給予備率が最低限必要とされる3%を下回ったためだ。
十分な発電設備容量を確保する制度として2020年度に容量市場が導入された。今年度から設備への支払いが開始され(<相次ぐ電気料金の値上げ>なぜ、毎月上がるのか?専門家が料金設定や補助金の制度を徹底解説 エネルギー基礎知識⑨)、一部の新電力では電気料金が上昇したが、容量市場制度だけでは安定供給に十分ではないようだ。
そんな状況下で、電気料金は、再生可能エネルギー賦課金額の上昇と政府による激変緩和措置の終了によりじわじわと上がっている。政府は、8月から10月の使用分に、「酷暑乗り切り緊急支援」として再度補助金を支出し、値上がりの影響を緩和する計画だ。
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「我慢せず冷房を」って言うけれど…政府支援5000億円の衝撃、日本を襲う停電危機と電気料金上昇で私たちの暮らしと産業はどうなる?