東京電力と関西電力管内の電力供給量が7月8日に不足する可能性が生じ、中部電力などから電力の融通を受ける事態になった。猛暑により供給予備率が最低限必要とされる3%を下回ったためだ。
十分な発電設備容量を確保する制度として2020年度に容量市場が導入された。今年度から設備への支払いが開始され(<相次ぐ電気料金の値上げ>なぜ、毎月上がるのか?専門家が料金設定や補助金の制度を徹底解説 エネルギー基礎知識⑨)、一部の新電力では電気料金が上昇したが、容量市場制度だけでは安定供給に十分ではないようだ。
そんな状況下で、電気料金は、再生可能エネルギー賦課金額の上昇と政府による激変緩和措置の終了によりじわじわと上がっている。政府は、8月から10月の使用分に、「酷暑乗り切り緊急支援」として再度補助金を支出し、値上がりの影響を緩和する計画だ。
3カ月間で政府が支援する金額は、電力だけで約5000億円になるだろう。電力消費量は、冬季の方が多くなる家庭が多いので、年末になれば、また補助金を再開するのだろうか。
それよりも、停電の心配をしなくてよい安定供給を実現する制度と一時凌ぎの補助金に依存しなくても良い電気料金体系を考えることが、重要ではないか。
料金が上昇するたびに人気取りのように支出される補助金が、持続可能であることはない。エネルギー問題を抜本的に考えなければ、家庭も産業も振り回される。
AIの利用などにより、これから電力需要が増加すると想定される中で安定供給と低廉な価格を実現する方法を考えることは重要だ。
我慢せずに冷房を使ってと言うが
例年室内で熱中症により亡くなる方のニュースがある。エアコンがあるのに我慢して利用しなかったケースも報じられている。躊躇なく冷房を使いましょうと言われても、電気料金を考えてしまうこともあるだろう。
米国の州ごとの家庭用電気料金とエアコン用の電力消費量のデータを見ると、電気料金はエアコンの使用に影響を与えていると思われる。北部では、夏季に冷房を必要としない気候の地域もあり、エアコンがない家庭もあるが、南部ではエアコンを利用することが多い。
夏季にエアコンの使用が必要な南部の州とハワイ州での家庭での平均エアコン用電力消費量と各州の家庭用電気料金が図-1に示されている。電気料金が高いカリフォルニア州とハワイ州のエアコン使用量は、他の南部の州よりも少ない。
自宅に設置した太陽光パネルによる発電量も含めた家庭の電力消費量は、全米平均年間1万566キロワット時(kWh)。日本の標準家庭の電力消費量の3倍を超えるが、州により消費量に大きな違いがある。電気料金が安い州の使用量は大きく、高い州の使用量は少ない傾向にある。
たとえば、全米で最も使用量が少ないカリフォルニア州の6482kWhに対し最も多いルイジアナ州は、1万4799kWhある。
カリフォルニア州の家庭用電気料金は34.26セント/kWh、ルイジアナ州の料金は12.08セント/kWh。電気料金が使用に与える影響は大きい。