世帯年収の中央値が7万4580ドル(約1180万円)。日本の423万円の2倍を軽く超える米国でも、電気料金次第でエアコンの使用を我慢する家庭は当然ある。電気料金は、健康にも影響を与える。
物価、賃上げ、経営に影響を与える電気料金
ガソリン、軽油などの価格が上昇すれば、輸送費に影響を与える。電気料金が上昇すれば、製造、照明、エアコン、冷蔵冷凍庫、電車による輸送などを通しコストを上昇させ物価に影響を与える。
電気の3割は家庭、7割は、製造、業務分野などで使用されているので、電気料金値上がりの物価への影響は小さくない。ロシアの引き起こしたエネルギー危機は事業用の電気料金を大きく引き上げた。
たとえば、高島屋の光熱費は連結ベースで、2022年2月期の89億1400万円が、23年2月期に124億9400万円と4割上昇している。24年2月期には少し下落したものの116億5500万円だ。
24年2月期の役員報酬と給与総額は616億円。22年2月期の593億円より23億円増えているが、同期間の光熱費の増加がなければ、もう少し賃上げが可能だったかもしれない。
国立42大学が持つ44の大学病院の光熱水費は、21年度255億円から22年度367億円に44%上昇した。大学病院の経営に大きな影響を与えている。
緊急支援策の中身は
酷暑乗り切り緊急支援策の内容は表の通りだ。10月使用分までとなっているが、電力需要量が多い月は、上から1月、8月、7月、12月だ。10月は電力消費量が少ない月になる(図-2)。
燃料価格の下落があれば、電気料金が下がるが、これからの数カ月間に燃料価格が大きく下落することはありそうにない。
となれば、冬にまた補助金を支出するのだろうか。家庭の電気・ガス料金への支出額の推移では冬季に支出額が多くなる(図-3)。
欧州諸国も、22年にエネルギー価格、電気料金が大きく上昇した時に補助金を支出したが、欧州連合(EU)統計によるとEU内で昨年下期も補助を続けた国はアイルランド、オーストリア、オランダ、ルクセンブルクの4カ国だけだった。
多くの国は、電気料金はエネルギー危機前よりも上昇しているものの、22年のピーク時よりは下がったので、補助を止めたが、料金引き下げのため制度を変えた国もある。