2024年11月22日(金)

World Energy Watch

2024年7月18日

 大きな料金上昇に直面したドイツは、固定価格買取制度(FIT)の電気料金を通しての負担を廃止し、税による負担に切り替え電気料金を抑制した。一次的な補助ではなく、制度の変更だ。

 2000年に導入されたFITの賦課金額は、21年に1kWh当たり6.5ユーロセント(11円)から3.7セントに引き下げられた。23年前半に賦課金額は全て税負担に切り替えられる予定だったが、電気料金の急上昇を受け予定より早く22年7月に廃止された。

日本の電気料金は高いのか

 世界一の化石燃料大国米国の平均電気料金との比較では、日本の電気料金は高い。しかし、欧州諸国との比較では、日本の料金は競争力があると言える(図-4)。

 エネルギー危機の影響を日本よりも大きく受けた欧州諸国の電気料金は、依然高いレベルにあるが、エネルギー危機前、欧州の電気料金高騰前でも日本の電気料金は欧州諸国との比較では競争力があった。

 たとえば、20年下期、日本の家庭用電気料金は1kWh当たり26円程度だったが、同時期ユーロ圏19カ国の平均は22.69ユーロセント、ドイツの料金は30.06セント、イタリアは21.53セント、フランスは19.58セントだった。

 福島第一原発事故の後、日本の発電を支えたのは石炭火力と液化天然ガス(LNG)火力だった。価格競争力のある原子力発電の比率は、11年以降EUよりも少ないが、その状況で日本の電気料金が競争力を持ったのは、豪州を中心とした輸入炭を利用する石炭火力が約3割の供給を行っていたからだ。石炭価格は、常に石油よりもLNGよりも安かった。

 これから脱炭素に向かい、再生可能エネルギー(再エネ)による発電量が増えていくならば、日本の電気料金は上昇する。

 遠隔地の再エネの発電量を消費地に運ぶため送電線の建設が必要とされ、常に発電できない再エネには火力発電あるいは蓄電池の整備費用が必要になる。統合コストと呼ばれる費用だ。

 欧州との比較でも日本の電気料金は上昇するだろう。欧州内には日照と風況に恵まれた場所があり、欧州諸国は連携線を通し恵まれた自然条件を発電に利用することが可能だが、日本はできない。

 これから、電気料金上昇が見込まれる中で補助金による料金抑制は持続可能ではない。

 料金を抑制するための抜本的な解決策を検討する必要がある。たとえば、今再エネ賦課金額は1kWh当たり3.49円だ。ドイツのように、この金額を廃止することが可能であれば、料金値下げは可能だ。

 財源の問題があるが、場当たり的な補助金よりも、分かり易いのではないか。加えて、これから導入される再エネ設備に対する補助額と導入に伴う統合コストは可能な限り抑制する方策が必要だ。

 12年の制度導入以降、昨年末までにFITに基づき再エネの電気の買取に使用した資金は28兆円だ。これ以上の負担は厳しい。


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