2025年4月15日(火)

古希バックパッカー海外放浪記

2025年4月13日

(2024.10.8~12.29 83日間 総費用24万1000円〈航空券含む〉)

日本人には不可解『殺生を禁じるあまり政治家を暗殺するヒンズー的思考』

バンガロールの近郊バスターミナル。周囲にほとんど雑草がないので残飯を探してさまよう野良牛

 10月15日@ムンバイ。政治家暗殺のTVニュース。新聞によると「国民会議派の有力政治家が三人組に銃撃され死亡。犯人は刑務所仲間。犯人は政治家と面識も利害関係もなく黒幕に雇われたらしい」。

 事件を識者が解説。「政治家がインド西部で狩猟したことに狂信的ヒンズー教徒が反発して殺し屋を雇った。ヒンズー教では殺生を禁じており有力政治家が堂々と狩猟したことはヒンズー教への冒涜である」。

 インド政治の2大勢力である国民会議派とインド人民党は長年のライバルだ。インド人民党は“ヒンズー至上主義”を党是としている。識者の解説は政治勢力の暗闘を示唆した。

 政治家が狩猟区で合法的にハンティングしたことは警察も確認している。“ヒンズー至上主義”を信奉するヒンズー過激派が黒幕なのだろうか。

狂犬病で毎年2万人死ぬインド、野犬を放置している精神風土

 10月25日@ハンピのホステル。ホステルの女子マネージャーとヒンズー青年ゲスト数人とおしゃべり。筆者が「インドは野犬が多く夜間外出できない。狂犬病で毎年多くの人が死んでいるのにどうして政府は野犬を放置しているのか」と疑問を呈した。

 全員がポカンとした。女子マネージャーは「インドにはもっと切実な問題が山積している。インドは人口が多いから狂犬病で死ぬ人数は話題にもならない」と筆者を一蹴した。

 外務省の海外危険情報は「インドでは狂犬病で年間2万人が死亡、世界の狂犬病死者数の36%を占める」と警告している。「日本を含む先進国では政府が野犬を捕獲する。引取り手が無ければ野犬を殺処分する」と筆者が制度説明したら、とたんに無益な殺生は許されないと猛反発。

 その後もなんどかインド人に野犬問題を提起したが、まったく相手にされなかった。やはり人間の命より殺生禁止戒律が優先なのか。

不衛生の根本原因、野良牛はなんとかならないのか

 筆者の独断的偏見だが、インドの町を不潔で汚くし悪臭を蔓延させているのは野良牛の糞尿である。野良牛がいなければインドは別世界であろう。行政が少し予算を付けて町はずれの雑草が生い茂っている空き地を囲って野良牛を放牧したら“清潔で快適な町”に変身すると思うのだが。

 何度もインド人に提案してみたが反応がなかった。インド人は野良牛の糞尿を問題にしていない。生まれた時から“そこら中にフツウにあるもの”なので“水たまり”や“石ころ”のような存在のようだろう。

 ムンバイ在住のIT技術者は「野良牛なんてごく少数。インドの牛の99%は所有者がいて飼育されている」と反論した。数人に確認したがインドの牛は少なくとも90%以上は飼われていると認識していた。

 ナショナル・グラフィック誌(2024/4/12)によれば、インドの野良牛500万頭による農作物被害、交通事故を深刻な社会問題と報じている。聖なる牛を殺すことは法律で禁止されているので、牛乳を出さず役立たずの雄牛は生まれると直ぐに捨てられることが野良牛増加の原因らしい。昔は農耕用や運搬用(バンガロールの下町では現在でも牛車が現役だ)として雄牛は有用だったがトラクターやトラックの普及で雄牛は人間社会に不要の存在になったのだ。

バンガロールの下町の牛馬の厩舎。午前中は稼ぎ時らしくほとんど出払っていた

インド人はガンジス川で沐浴して浄化されるが日本人は命取り

 バラナシはヒンズー教徒の至高の聖地だ。バラナシに逗留して聖なるガンジス川で沐浴すれば心身ともに浄化されるという。日本外務省はバラナシでのガンジス川沐浴は“危険”と警告している。筆者はおぞましく汚染しているガンジス川で泳いで、耳や目が腫れたとか、手足が化膿した日本の能天気な若者に何人も会ったことがある。

 コチの旅行会社勤務の女子によると、ガンジス川でインド人が沐浴できるのはインドの様々な雑菌に免疫があり、さらに食事で大量のターメリックを摂取しているからという。ターメリックには強力な解毒作用があるのでインド人はほとんど抗生物質を使わないとか。

 添乗員として3回訪日した彼女は「世界一清潔な環境で育った日本人がガンジス川に入ることは生命の危険を伴う」と断じた。インド旅行はガンジス川に限らず“健康上の危険を伴う”覚悟が必要である。

ボートで船酔いして国立病院へ救急搬送

 11月13日。フォート・コチからボートでコチ市内に移動。不摂生と睡眠不足が原因なのか窓が密閉されたボートで船酔いした。ボートから降りる時に軽い貧血を起こしてよろけた。周囲のインド人が荷物を持ってくれ両脇を支えられて下船すると女性係員が飛んできて持病の有無、年齢、同行者の有無を確認。持病はなく単なる船酔い(seasick)であり71歳で1人旅なることを伝えると、警官が来て有無を言わさず国立病院に搬送された。

コチの国立病院の外塀に描かれた様々な人々に囲まれる女性医師。企業家 青年によるとインド国民から尊敬されるツートップはインド国軍の軍人、国立病院の医 師という。英国など海外へ行けば何倍もの高給が保証されるのに公務員の安月給で貧し い人々の医療に献身しているという評価

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