国立病院の救急救命センター、“診療・検査・飲み薬”完全無料
救急救命医に船酔いによる貧血だと説明したが71歳は平均寿命が日本より17歳も短いインドでは超高齢者扱いで「検査結果で入院させるか判断する」と“大ごと”になってきた。
救急救命センターは混みあっているが効率的。血圧脈拍&血中酸素濃度測定、採血、心電図撮影と手際よい。治療室でベッドに寝かされ検査結果を待ったがナースが定期的に巡回して異変ないかチェックする。1時間半ほどで検査結果が出て医師が“異常なし”と確認して退院許可が下りた。検査結果と診断書と4種類の薬をもらった。医師が疲労回復のため栄養剤、消化剤など3日分を処方したのだ。
公立病院は無償と聞いてはいたが外国人にも完全無償とは些か驚いた。
宿痾の“インド水虫”
11月初旬に左足薬指の水虫に気づいた。筆者は数年に一度くらい軽い水虫になるので、日本製某軟膏を携帯している。某軟膏は1回か2回塗ると、100%完治するという優れもの。今回も某軟膏を毎日塗ったが改善しないどころか日々悪化。
“日本水虫”が再発したのではなく“インド水虫”に感染したのだ。次第に悪化して左足の全ての指に水虫が蔓延。アレッピー、コーラム、バルカーラと、鄙びたリゾートには医療機関がない。薬局で水虫(athlete foot)を説明して軟膏を買ったがオロナイン軟膏のような代物だった。
やはりインドの水虫にはインドの軟膏、インド私立病院事情
12月6日。バルカーラからカンニャークマリに移動。ホテルの個室にはインドでは珍しい温水シャワーがあった。ネットで調べると水虫菌は44度で死滅するとある。シャワーを最高温度に設定してバケツに熱湯を汲んで数分間浸かり、少し冷ましてから再度数分間浸かるという荒行を朝夕2回やってみた。熱湯治療で多少改善したのでネットで病院を探した。大きな町なので数軒の病院がある。
12月9日。私立総合病院へ。混みあっているので長期戦を覚悟したが、意外にスムーズ。受付で名前、年齢、宿泊ホテルなどを登録。そのあとナースが予診して担当医を割り当てる。診察料約280円を払って待合室へ。
ほどなく名前を呼ばれ治療室へ。すぐに女性医師が来て予診記録を見ながら簡単な質問をして処方箋作成。女性医師がナースに指示すると、ナースは左足指を手際よく消毒して患部に塗り薬をつけた。ナースは「靴下を履かずサンダルで歩くこと、清潔に保ち1日数回洗うこと、塗り薬は1日2回、飲み薬は日数分を飲み切ること」など注意事項をご託宣。薬局で薬代1200円払い軟膏1本、飲み薬5種類を受け取った。小一時間で終わったので日本の総合病院よりは早い。
熱湯療法とインド軟膏と飲み薬が功を奏して3日後には1カ月悩まされたインド水虫を完全撃退。私立総合病院に感謝。
公立病院の評価は最低レベル、旅費節約よりも“安全第一”
ホテルの近くに公立病院もあったが、グーグルの評価は最低ランク。公立病院は完全無償ではあるがクチコミを見て恐ろしくなった。曰く、「救急搬入されたが1時間以上放置された」、「ベッドもシーツも診察室も不潔で掃除してない」、「人員不足と能力不足で危うく殺されかけた」とか凄い書き込み。
多少お金出しても安心安全清潔第一。
高齢化社会では安楽死が制度化され“姥捨て山”が現実になるのか
豪州の58歳の看護士R氏。豪州でも高齢化が進行、現役世代の負担増と将来の年金財源の不安から若者の不満が高まっているという。
R氏は仕事で沢山の老人の最期を看取ってきた。過去数十年を振り返ると、モルヒネ投与などで末期を苦しまずに死ぬことを本人や家族が望むケースが増えてきた。しかし法制度としての安楽死は安易に賛成できないと。「安楽死が合法化されると選択肢として安楽死を提示して安楽死へ意図的に誘導するような運用になる恐れがある」と指摘。
“役立たずの穀潰し”(useless eater)と若者が老人を蔑視する風潮が豪州にじわじわ広がりつつあるという。高齢化社会で不満を抱える大衆心理が安楽死合法化と結びつくと“恐ろしい安楽死制度”が生まれると懸念した。極端な例として高齢者医療予算を抑制するために安楽死の目標人数の割当(quota)導入を挙げた。
ハンピで出会った映画監督志望青年は“楢山節考”の姥捨て山をモチーフにしたシナリオを書いていた。インドが経済発展するなかで取り残された老人を抱えた貧しい家族が老人の暗黙の同意の下で“安楽死”させるという社会派悲劇だった。
