フィナンシャル・タイムズ紙は、「米国は1979年の米国大使館人質事件の報復としてイランの反政府デモに軍事介入を考えているが、イランはベネズエラとは異なり大きなリスクがある。さらに、アラブ産油国は、イランのイスラム革命体制は崩壊の危機に瀕しているとは考えておらず、米国の軍事介入は、イランの報復を招くので止めるべきだと米国を説得しようとしている」とする社説を1月15日付けで掲載している。要旨は次の通り。
ベネズエラの大統領の拘束に成功してトランプ大統領は勢いづいており、イランの反政府デモ隊を救うために米国が介入すると売り込んでいる。大統領は補佐官達と協議を重ねており、軍事介入が迫っている可能性がある。しかし、米国のイラン情勢への介入はより大きなリスクを招く恐れがあり、ベネズエラ以上の予測不能な結果をもたらすだろう。
イランに対する武力行使は、米国にとり屈辱的だった79年の在イラン米国大使館人質事件に対する復讐を切望している歴代の米国大統領の願望だったが、トランプ大統領自身の野心とは別に、イランの反政府デモはロシア、中国、北朝鮮を加えた「新・悪の枢軸」に楔を打つ好機と考えている米国内の政治的、安全保障面でのタカ派も大統領をけしかけている。
トランプ大統領は、イラン問題で手際の良い成果を欲している。つまり、手早く仲裁を行って立ち去るということだが、イランの複雑さはこのような単純な対応を許さない。まず、イランのイスラム革命体制は分裂していないように思われる一方、反政府デモは自然発生的であり各派を糾合して広範な支持を得られる指導者はいない。
イランのイスラム革命体制が崩壊すれば多くのイラン人のみならず中東地域は歓喜するだろう。今回の反政府デモの鎮圧による死者数は、何千人にもなると言われている。
しかし、イラン人は、イスラム革命体制の代わりに混乱が起きることは望んでいないので、宗教指導者が支配するイスラム革命体制に代わるものは、民主的な政府ではなく、革命防衛隊となろう。そして、革命防衛隊は、イランの抱える問題の不可避な一部分だ。
米国とイスラエルがイランの核施設を空爆した後、短期間だが外国勢力による攻撃は、イラン人の愛国心を駆り立てた。反政府デモ隊の人々の絶望感は大きく、一部にトランプ大統領の介入を求める者もあるが、体制の変更が米国によって仕掛けられたとなれば、9000万人の誇り高い人々からなるイランでは、かえって問題を引き起こすかもしれない。
