Foreign Policy誌(Web版)は3月14日付けで米国の安全の保障がなくなることで、欧州とアジアで核拡散が急速に増える可能性があると指摘する論説‘An Unreliable America Means More Countries Want the Bomb’を掲載している。概要は次の通り。

トランプ大統領による最近の外交上の動きは、欧州における伝統的な同盟国との間を遠ざけ、ロシアを喜ばせている。このパラダイム・シフトは世界の安全保障にとってさまざまな大きなリスクをもたらす。最も差し迫った問題は、核拡散の脅威が蔓延することである。
米露という二つの世界最大の核大国の関係が改善することは表面上、核戦争のリスクを低減するように思えるが、真実はその逆である。実際は、多くの国が核戦力を持とうとし、核使用のリスクが高まり、核がテロリストに渡ったり、事故によって核の発射に至ったりといった世界的な核の不安定化に向かっていく危機に瀕している。
過去80年間、米国は、欧州とアジアの多くの国に対し安全保障を提供してきた。トランプは、割の合わないことをしてきたと主張するが、そのプラスの効果は核拡散を封じ込めてきたことである。米国の同盟国を含む多くの国が核不拡散条約(NPT)に署名したのは、米国が「核の傘」によって安全を保証したからである。
しかし、米国の核の傘の信頼性はトランプによって打ち砕かれた。トランプ政権による厳しい批判の対象となっている欧州の北大西洋条約機構(NATO)同盟国は、ロシアからの核の脅威に対して米国が共に立ち上がってくれるとどうして信じることができようか。
中国や北朝鮮の核の脅威にさらされている日本、台湾、韓国も同じ疑問を抱くであろう。欧州であれ、アジアであれ、一カ国が核兵器の製造によって安全を確保しようとすれば、いくつもの核保有国が生まれるドミノ効果を生みかねない。それは、核不拡散体制の致命傷となろう。
欧州には仏英という核兵器国があり、NATOに対して拡大抑止を供与できるだけに、欧州よりもアジアの方がより大きな核拡散のリスクを抱えている。一方、欧州においてさえ、右翼の民族主義者の台頭という政治状況が懸念されている。