ニューヨーク・タイムズ紙のヘニガン論説担当記者が、3月12日付論説‘America’s Allies Are Shaken, and Now They’re Taking Action’で、トランプ大統領の言動によって米国の核の傘への信頼が低下、揺さぶりをかけられた欧州やアジアの同盟国が行動を起こし始めた、と論じている。要旨は次の通り。

トランプ大統領のロシア尊重、ゼレンスキー大統領への叱責、そして欧州の同盟国に国防費増額を強引に迫るやり方が、同盟国の間で核武装への自由競争が起きかねないという思わぬ事態を引き起こしている。
欧州やアジアの同盟国はこれまで何十年も米国の拡大抑止政策に依存してきたが、トランプの言動で、この政策への信頼は崩れ始めた。
欧州ではすぐに波紋が起きた。ポーランドのトゥスク首相は、ポーランドは核兵器のことも考えねばならないと述べた。
次期ドイツ首相と目されるメルツ氏は、ドイツは核兵器の共有について仏英と協議すべきだと述べた。
フランスのマクロン大統領は、「関心のある国にはフランスの核の保護を拡大してもよい」と発言、実行可能性や成否には疑問があるが、興味深い考えを示した。
今や同盟国の指導者たちは、戦争になった時に自分たちは米国の助けをあてにできるのか、と深く自問している。
その答えへの懸念を示すように、欧州の指導者たちは総額1600億ドルの集団的軍事支出計画について協議した。しかし、通常兵力を自らの手に取り戻す決定は歓迎すべきだが、核兵力拡大の可能性には不安を覚える。
トルーマン以降、歴代の米大統領は核兵器拡散の制限を目指してきた。共和・民主両党の大統領が拡大抑止は米国に利すると認めたのは、一つにはそれによって軍事同盟が強化されるからだが、より重要なのは、米国の拡大抑止のおかげで多くの国が核武装の選択をしなかったことだろう。