2025年12月5日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年4月2日

 しかし今やこのやり方はぐらついている。2月26日、趙兌烈・韓国外相は、核武装の可能性は排除されないと述べた。

 韓国が核武装に走れば、他の核不拡散条約(NPT)署名国も追随する可能性がある。中国の軍事的脅しを受けている日本や台湾は自らの選択肢を再考せざるを得なくなるかもしれない。中東ではイランが完全な核武装に近づきつつあり、サウジ、エジプト、トルコ等を核の獲得へと促すかもしれない。

 トランプは、核拡散に関する自分の考えは歴代の米大統領と変わらないと主張するが、彼の政策は反対の効果をもたらしつつある。同盟国の間では核兵器保有の価値が急上昇する一方、拡大抑止への信頼は低下した。

 トランプは、各国で起きている核拡散の議論を打ち切らせ、米国の拡大抑止政策は揺るぎないことを同盟国に確信させるべく、早急に行動すべきだ。

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各国で高まる核武装

トランプ第2期政権の政策は、Pax Americana(アメリカの覇権に支えられた平和)を脅かすものになっている。特に、同盟関係と核兵器問題への対処は重要な問題である。

 上記のヘニガンの論説は、欧州諸国を含む同盟国が米国の拡大抑止の信頼性に疑問を持ち、それなりの対応をしてきていることを描写しているものであり、傾聴に値する警告である。

 ポーランドのドゥダ大統領は3月13日、米国に対し米国の核兵器をポーランドに持ち込むように求めた。現在、欧州には、オランダ、ドイツ、イタリア、ベルギー、トルコに約100発の米国の核兵器が配備されているが、ポーランドにも同じように配備するように求めたものである。


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