2025年4月12日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年4月1日

 2025年3月5日付のニューヨーク・タイムズ紙は、フランスのマクロン大統領が演説で、欧州は退却する米国と好戦的なロシアの双方に対応する必要があり、フランスの核抑止力を欧州に広げるための討議を開始する旨述べたことを解説する記事を掲載している。

(Victority/Connect/gettyimages・AP/アフロ)

 欧州がロシアの侵略と米国の支援の低減に直面する中、マクロン大統領は、3月5日、フランスの核戦力による保護の対象を欧州の同盟国に広げるための討議を進める意向を示した。フランスと英国のみが欧州における核兵器国で、欧州連合(EU)に入っているのはフランスのみである。

 「我が国の核抑止力は、我々を守っている。それは、包括的であり、主権に基づくものであり、完全にフランスのものである。1964年以来、それは、欧州の平和と安全を守るために明確な役割を果たしてきた。私は、欧州大陸の同盟国に対し抑止を通じた保護を提供することについて戦略的な討議を開始することを決断した」と、マクロン大統領は述べた。

 今、米国のトランプ大統領がウクライナへの支援を止め、欧州への伝統的な安全保障の保護を引き上げ、同盟国に対して防衛費を増額するよう圧力を加える諸決定を下す中、欧州は安全保障のあり方について再考を余儀なくされている。

 マクロンは、欧州についての厳しい状況について触れ、「ロシアは、今後何年もの間、フランスと欧州にとっての脅威となった」「私は、米国が我々の側に居続けると信じたいが、そうでない事態にも備えなければならない」等述べた。

 マクロンは、核抑止についての討議を開始するのは、「ドイツの歴史的な呼びかけ」に応じたものである旨述べた。ドイツの首相となることが確実視されているメルツは、2月に英仏の核の傘を広げることについて両国と討議する必要があると述べた。マクロンは、フランスは、他の国と抑止についての共同訓練を行うことができる旨述べるが、フランスの、あるいは仏英の核の傘を欧州に広げるやり方がどのようなものになるかは現時点でははっきりしない。


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