2025年4月23日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年4月11日

 3月19日付けフィナンシャル・タイムズ紙の解説記事が、「欧州連合(EU)は欧州委員会による1500億ユーロの加盟国への融資をもって兵器調達を拡大することにより、欧州の防衛産業基盤を強化し兵器の米国依存を軽減・是正する計画を推進しているが、調達対象から米国、英国、トルコなど第三国を排除する方向となっている」と報じている。要旨は次の通り。

(rarrarorro/viti/gettyimages)

 米国、英国、トルコなど第三国の兵器企業は、当該国がEUと防衛・安全保障パートナーシップ協定を結ばない限り、1500億ユーロの防衛資金から排除される。それが、3月19日に欧州委員会が公表した白書の提案である。

 また、第三国がその製造または特定の部品の使用に対する制限を有するか、あるいは第三国がその使用にコントロールを有する先進兵器もその対象から排除される。これによって、パトリオット防空システム、およびワシントンが使用し得る場所について制限を課しているその他の兵器システムは排除されることになる。

 この政策は、米国の防衛パートナーおよびサプライヤーとしての長期的な信頼性に対して恐怖が持たれる中で、「Buy European」による欧州の防衛投資の強化を要求するフランスその他の諸国の勝利を意味する。

 EU、ノルウェー、ウクライナに由来する部品のコストは最終製品の65%を下回ってはならない。残りは安全保障・防衛パートナーシップ協定を結んだ諸国であれば支出可能である。

 「これは欧州の防衛産業を本当に強化する好機である」とカヤ・カッラス(EU上級代表)は述べ、ウクライナの戦争は、外国による制限のない兵器を持っていることの重要性を証明したとも述べた。

 英国はこのEUのイニシアチブの対象に含まれるよう強く働きかけた。特に、英国は欧州の防衛能力の強化を目指す欧州の「有志国連合」で鍵となる役割を担っている事情がある。英国の防衛企業はイタリアやスウェーデンのようなEU加盟国の防衛産業と深く結びついている事情にある。

 もし、米国、英国、トルコのような第三国がこのイニシアチブに参加を望むのであれば、EUと安全保障・防衛パートナーシップ協定を結ぶ必要がある。そのような協定についてのロンドンとブリュッセルの話し合いは始まっているが、漁業権や移民のような面倒な問題を含む広範な合意を求める要求に巻き込まれている。

 英国とトルコの排除は、これら諸国の製造企業またはサプライヤーと緊密な関係にある欧州防衛企業大手にとって厄介な問題となろう。この問題について問われた英国の当局者は、「欧州の防衛市場の分断化を避けるという欧州の安全保障の利益のために、EU加盟国が第三国と組むことを可能とする法的な構造を構築すべく、我々は一緒に作業する用意がある」と述べた。


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