EUの動きは英国の防衛産業に大きな狼狽を引き起こすであろう。英国の防衛産業の有力な関係者は「少なからぬ懸念」だと述べ、「莫大な好機であり、英国を欧州の一部と見做すことが正しい。しかし、EU、特にフランスが取引に出るのなら、防衛と安全保障に関しては結合した一つの欧州という哲学全体を損なうことになる」と述べた。
防衛支出をEU企業だけに囲い込もうとするフランスの過去の努力は、ドイツ、イタリア、スウェーデン、オランダのようなEUの非加盟国の防衛企業と緊密な関係を有する諸国の強固な抵抗に遭っている。
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「Buy European」の勝者はフランス
この記事はEUで検討が進行中の欧州の防衛能力の強化のための計画「Readiness 2030」(「ReArm Europe」の名称から変更された)のうち、EUが1500億ユーロの融資をもって加盟国の努力を支援する計画(「SAFE」と称されている)の制度設計がどのようなものかを書いたものである。
「SAFE」については、3月19日に公表された欧州委員会の「Readiness 2030」に関する白書および「SAFE」のEU規則案に説明がある。内容は複雑だが、大筋は次のようなことである。
・「SAFE」は少なくとも2カ国が関与する共通調達を融資の対象とする。
・そのうちの1カ国は融資を受ける加盟国であるが、この1カ国と組む他の国は、別の加盟国、欧州自由貿易連合(EFTA)の加盟国(従って、ノルウェーは適格)、あるいはウクライナである必要がある(ウクライナを含んでいるのは、ウクライナ支援の意味を込めたものであろう)。
・他に、安全保障・防衛パートナーシップをEUと結んだ諸国も共通調達のため適格となる。
・EU、ノルウェー、ウクライナに由来する部品のコストは最終製品の65%を下回ってはならない。如何なる部品もEUおよび加盟国の安全保障・防衛の利益に反する第三国から調達されてはならない。
・共通調達はウクライナ戦争の教訓を踏まえ、次のようなプライオリティ分野を対象とする:防空・ミサイル防衛、遠距離精密攻撃能力を含む砲撃能力、ミサイル・弾薬、ドローン・ドローン迎撃能力など。
以上のように「SAFE」の「Buy European」のアプローチは明瞭であり、フランスの勝利だとこの記事は指摘している。欧州の防衛産業基盤の強化が目標であるので、「Buy European」は当然とも言うべきであろう。
