2026年2月25日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年2月25日

 2026年1月22日付フィナンシャル・タイムズで、アラン・ビーティが、カーニー首相の新たな世界秩序構想の実現には政治的意思の転換が必要だと述べている。

カナダのマーク・カーニー首相(ロイター/アフロ)

 カナダのカーニー首相のダボス演説が今年のダボス会議で最も優れた演説であることは、多くの者が認めるだろう。カーニーは、米国主導の国際秩序が崩壊した今、中堅国家はそれに代わる柔軟で多層的なシステムを構築しなければならないと警告した。

 過去に、貿易の分野では似たような主張はあったが、実際には大きな変化は起きなかった。17年、カナダと欧州連合(EU)との貿易協定が発効した。そこには、相互承認協定を通じて専門サービス市場を統合するという革新的な仕組みが盛り込まれたが、その第一号となる建築家間の合意は、今年1月19日に漸く発効するまで9年も要した。同様に、カナダは17年にトランプが離脱した環太平洋経済連携協定(TPP)協定を救う役割を果たし、主に中規模の貿易国からなるこの枠組みは、18 年12月に包括的および先進的な環太平洋連携協定(CPTPP)として発効し、現在は12カ国が加盟しているが、カナダの貿易は実質的には多角化されていない。

 カナダの輸出に占める米国の比率は、2000年代半ばの 80%台半ばから10年までに70%台半ばへと低下し25年春以降は70%を下回っている。もし関税攻勢が今後も一服するようならば、米国は引き続きカナダ輸出の大部分を吸収し続けるだろう。

 カナダはレアアース等鉱物資源が豊富だが、EUとの合意は成果を上げていない。CPTPPとEUは、米国の影響圏の外で結びつきを強める協力を提案してきたが、EUの姿勢が構想を進めることを妨げている。欧州議会は1月、南米の貿易圏メルコスールとの貿易協定の批准を延期する決定をした。

 国内の制約という点では、カーニーは最近、中国との間で、中国がカナダ産キャノーラ油への関税を引き下げることと引き換えに、電気自動車(EV)4万9000台の輸入枠を設ける合意を発表した。これは巧みな経済外交ではあるが、年間約200万台規模のカナダの新車市場全体から見れば小さい。カーニーは、カナダの自動車関連雇用(12 万5000人)の大半が集中し、米国と統合された供給網に依存するオンタリオ州の利益を常に考慮しなければならない。


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