2026年2月25日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年2月25日

 中堅国家の外交を後押しするはずの制度も弱体化している。カーニーが正しく指摘したように、世界貿易機関(WTO)は「大きく弱体化」、基礎原則である最恵国待遇が脅かされている。カーニーが示唆したように、多くの低所得国は、多国間体制が富裕国の利益のために運営されてきたと考え、その経験を繰り返すことに警戒感を抱いている。

 カーニーの分析は正しく、アプローチも原則としても妥当だ。しかし、各国が保護主義の本能を乗り越え多国間体制を築くには、大恐慌と第二次世界大戦という衝撃が必要だった。同様に、カーニーが望むような機動的で層的な中堅国の協力のシステムが生まれるまでには、長い時間、そして恐らくはトランプによる更なる破壊が必要になるだろう。

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大きな意味を持つ新たな合意

 世界貿易を知悉するビーティの指摘は良く分かるが、歴史上の今の尋常でない時点で一番大事なことは、政治的言動や枠組の合意などを変えることが一番大事であり、その細部の実施の遅れなどは当面小さなことではないだろうか。新たな合意の作成や、宣言の発出、首脳会談を開催することは、大きな舵が必要な時代には、意味がある。     

 昨年のカーニーの訪中の具体的成果は経済的には小さなことではあったかもしれないが、カナダが中国にカナダ産キャノーラ油への関税引き下げを求め、その見返りにカナダは、数量は僅かであっても中国EVの輸入割当てを認めたことは大きな転換だったと言える。その意味で、カナダの対中合意はもう少し前向きにとらえて良いのではないか。ビーティも「巧みな経済外交」だったという。

 ビーティは、1月17日にEUがメルコスールとの貿易協定に署名し、欧州議会に送付したことにも言及する。欧州議会は、一部に同協定への反対があることをも背景に、欧州裁判所の審査が必要として、その結果を待っているところであり、議会がこの合意に反対ということを必ずしも意味しないようだ。25年以上交渉していたEUがメルコスールとの合意に踏み切った象徴的意味は大きい。


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