「島の誇り? そりゃ、この大自然だよ」
東経122度、太陽が日本で最後に沈みゆく沖縄県与那国島は日本最西端の「国境の島」である。
与那国空港から車で約20分の場所にある「日本最西端の碑」。
そこから台湾までの距離は111キロ・メートルである。小誌取材班が訪れたのは2月中旬のこと。2日間の滞在中、台湾の姿は捉えられなかったが、空気が澄んだ日には東海岸の宜蘭県や花蓮県方面の山々を肉眼で見ることができるという。
冒頭の言葉は、初日の夜、飲食店で出会った新嵩喜八郎さんのものだ。新嵩さんは長年、地元の観光協会会長を務め、「与那国島海底遺跡」を発見したレジェンドだ。
翌朝、取材を進めながら島内を1周すると、新嵩さんの言葉の意味が心底理解できた。地面から力強く茂る亜熱帯植物、一面に広がるサトウキビ畑、道端ではヤギがのんびりと草を食み、たてがみの美しい与那国馬が悠然と道路を横断する──。
同じ沖縄県でも本島の那覇とは明らかに異なる趣である。リゾート地として知られる宮古島や石垣島とも一線を画し、自然の中で生かされている印象を持つ。まるで島独自の時間が存在しているかのようだ。
ただ、島民に取材するたびに気になることがあった。異口同音に「どういうことを伝える取材なのか」と繰り返し〝念押し〟されたからだ。
その理由は後述するが、小誌取材班は与那国島で暮らす人々を時間の許す限り取材し、「この島で生きる」とは何かを考えてみた。
人々の生活と生業を守る
「海の警察」海上保安官
「沖縄の海は、やっぱり広いですよ」
こう話すのは石垣海上保安部の豊見山勇貴さん。警備救難課の国際取締官として、八重山列島の周辺海域で警備にあたる。与那国島には20人程度の職員が1週間から10日間、石垣海上保安部から交代で「駐在」する。豊見山さんは「何かがあれば、全て1人で対応する。これが与那国駐在の特徴です」とさらりと述べた。
「与那国島での事件はほとんどないですが、事故であればダイビングなどのレジャー中に溺れ、心肺停止に至るケースも見られます」
連日、「中国海警局が周辺海域での活動を活発化させている」と報道されているが、実態はどうなのか。

