2026年3月23日(月)

日本の縮充化

2026年3月23日

 毎日新聞記者で秋田支局に勤務する工藤哲さん。『ルポ 人が減る社会で起こること』(岩波書店)で、人口減少によって公共サービスが次第に縮小する実態や、「シルバー民主主義」とも呼ばれる世代間対立を浮き彫りにした。秋田県が向き合う現実は、決して東京でも他人事ではない。

(MALTE MUELLER/GETTYIMAGES )

 秋田県といえば、昨年、クマの出没が全国的なニュースになった。

 「まさに、人が住まなくなった里からクマの出没が始まりました。山間地ではクマ対策のためにも、草刈りなどをしないといけないとわかっていても、『では実際に誰がやるの?』となると、マンパワーが足りないということに直面します。特に昨年の秋は、秋田市内の中心部までクマが出没するようになり、本当に日常生活の中でも危険を感じるといった事態になりました。

 今年の冬も大雪になりましたし、秋田県では、人口減少の問題に向き合いつつも、それと同時に足元で日々新たに発生する問題にも対処していかなければならないという現実があります」

 秋田県の実態について、書籍の形にした理由を、工藤さんはこう話す。

 「秋田では年間1万人余りのペースで人口が減っています。こうした中、東京一極集中は進み、人も情報も東京発の情報が圧倒的に多い。そんな中で、相当な注目ニュースでない限り、秋田の日常のことは全国向けに伝わりづらく、何とかならないだろうかと。書籍の形なら、身近に起きていることの全体像をより浮き彫りにできるのでは、という思いがありました。

 2026年4月で発行から約1年になりますが、現在3刷で、秋田のジュンク堂書店の2025年の『一般書ベスト』のランキングでは2位でした。予想以上の反響に驚きましたが、それだけ地方の情報が相対的に不足していることの表れだと思います」

 本書の中で特に印象的だったのが、「高齢者増、少子化」によるシルバー民主主義の台頭だ。仙北市のように、「敬老祝い金」などを廃止して、子育て支援の財源にしようとしたが、議会で否決されてしまった。世代間対立を超えるには何が必要なのだろうか。

 「年々少子高齢化が進み、秋田でもいよいよこのままではまずいのでは、という意識が年々強まっていると感じています。そのせいか、知事や大館市長、鹿角市長は大幅に選挙で若返りました。今までの『勝手を知るなじみの首長』では先行きが厳しいのではないか、という空気が広がってきています。こうした機運が政治にとどまらず、企業などでどれだけ浸透するかが鍵だと思います。

 各所で聞く限り、現状を変えていこう、より若い世代の価値観に合わせていこう、という機運が秋田でもうかがえます。でも、人口減少によって高齢世代の比率が相対的に高い状態であることには変わりありません。やはり大切なのは、秋田の人が外を見ること、また外の人が秋田を見ること、そして、積極的な往来だと思います」


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