2026年3月27日(金)

日本の縮充化

2026年3月27日

島民の生活に欠かせない
医療インフラをどう守るか

 そんな与那国町診療所も、実は今年の3月末で、閉院危機にさらされていた。与那国町長の上地常夫さんはその背景をこう説明する。

町長選の時は欧州の報道機関も取材に来たと話す上地さん

 「これまで地域医療振興協会が指定管理することで、定期的に医師を派遣する体制が確保されていました。

 しかし、離島に派遣できる医師の確保が難しくなったことに加え、台湾有事への懸念を理由に3月末で指定管理から撤退することになったのです。私が昨年8月に町長に就任して以来、次の指定管理者を探すために全国を飛び回り交渉を重ねました。やっと先日、琉球大学からの派遣が決まり、当面安定的な医師を確保できる体制が整い、4月以降も診療を継続できることになりました」

 与那国町診療所には、通常であれば、小規模診療所には設置されることがないCTがある。これは上地さんが長寿福祉課長時代に導入したという。正確な診断ができるようになり、ヘリでの急患搬送が激減した。町立だからこそ実現できた設備投資だが、町を超えた広域の支援も欠かせない実情がある。島には歯科医がいないため、島民は歯科治療が必要な場合は石垣島まで通っている。

 「島民にとっては、飛行機がバス代わりです。石垣島の通院に合わせて衣料品購入などの買い物を済ませる方も多い。町では航空運賃を補助する制度を設け、少しでも通院の負担を軽減するように努めています」

 また、上地さんはこう強調する。

 「医療は人が住む上で欠かせないインフラです。自衛隊には医務官がいるのに、この島の医療が途絶えることに違和感はないのか、そう国にも訴えているところです」

名作テレビドラマ「Dr.コトー診療所」のロケ地もこの島にある

漁協組合長の本音
「台湾有事は始まっている」

 「魚たちは頭が良いんだ。最近の夏は暑すぎて、冷えた海底に潜っちまう。だから、シーズンは今なんだ」

港にあげられたカジキ。かつてはモリで突いていたそうだ

 与那国島が誇るカジキ漁について説明してくれたのは、与那国町漁業協同組合組合長の嵩西茂則さんだ。嵩西さんが座る漁協事務所の机の背後には、「日台民間漁業取り決め関係水域」の地図が貼られていた。嵩西さんは地図を指示棒でなぞりながら、台湾有事をめぐる昨今の動きについて、本音を語ってくれた。

「昔は島の周りに台湾船がよく来ていた」と嵩西さんは言う

 「この与那国町において、本当に台湾有事が起こり得るのかどうか。それは、島の誰しもが、常に頭の片隅で抱いている懸念です。

 ただ、マスコミ報道には疑問が残る。取材に来るなり、島民たちに『避難するんですか?』『移住するんですか?』と聞いて回る。どうしたら良いかなんて、私にだって分からない。これは、日本の最西端の島にいる私たちだけの問題ではなくて、日本国の問題であるはずです。

 なのに、メディアは煽るだけ煽って、島民を怖がらせ、取りたいコメントだけ聞いて帰るといったスタンスが多いように感じます」

 続けて嵩西さんはこう話した。

 「軍事衝突は起こっていませんが、私はすでに台湾有事は始まっていると思っています。もし、中国が台湾を制圧したら、じりじりと与那国島に圧をかけてくるでしょう。そうなると、怖くて漁にも行けなくなる」

 国境の島で生きること、そして、この島で漁業を営むことの緊張感をひしひしと感じたとともに、島の人たちが取材意図を〝念押し〟する理由がわかったような気がした。 

 では、国の対応はどう評価しているのか。


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