2026年4月27日(月)

Wedge OPINION

2026年4月27日

 2026年2月28日、米・イスラエルがイランの最高指導者ハメネイ師を殺害し、イランに対する戦闘を始めた。米・イスラエルの一方的な軍事介入によって火蓋が切られたこの戦争は、イランにおける民間人死傷者の増加や軍事・重要インフラの破壊などの、甚大な人的・物的被害を出しながら進んでいる。同時に、この戦争は、イラン体制内部や、米・イスラエルとイランの関係だけではなく、中東および南アジアも含む周辺諸国に影響を与えるだろう。

3月2日、イランの首都テヘランで空爆された警察署。日を追うごとに被害は広範に及んでいる(MAJID SAEEDI/GETTYIMAGES)

 米国が21年8月にアフガニスタンから軍を完全撤退させたことから本格的に生じ始めた、中東での「力の空白」以降、その隙間を縫うようにロシアや中国が存在感を強めてきた。中東は、今回の米国の対イラン攻撃を含め、大国や中東諸国の関係性が変化する「地殻変動」の時期にある。ただ、今回の攻撃では、イランによるアラブ湾岸諸国への報復攻撃ばかりが注目されがちだが、イランとその周辺諸国における様々な関係性への変化も見過ごせない。マクロな視点から中東情勢を見ることが重要だ。

 イランの国防の基本は「盾」の考え方であり、基本的には防衛を重視し、攻撃主体に対しては同害報復を図る傾向を有する。核開発や、ミサイル・ドローン開発、地域の代理勢力支援を通じた「抵抗の枢軸」育成も、イランの抑止力を高めるための行動と理解されよう。

 一方の米・イスラエルからは、こうしたイランの行動は自国への安全保障上の実存的脅威として映る。弾道ミサイルの射程内に収まるイスラエル本土や湾岸諸国の米軍基地はいつ攻撃を受けるかわからず、レバノンのヒズボラをはじめとする「抵抗の枢軸」はイスラエル本土へのミサイル攻撃などを通じて危害を加えてきた。双方に根本的な認識の違いが存在しており、ついに、米・イスラエルが「差し迫った脅威」があるとの理由で攻撃を開始するに至った。

 今回の攻撃を巡り、イランから攻撃を受けた国には、イスラエルのほか、サウジアラビア、バーレーン、アラブ首長国連邦(UAE)、カタール、クウェート、オマーンなどの湾岸周辺国がある。石油や液化天然ガス(LNG)などの主要エネルギー関連施設を含め、空港や商業施設や工業都市などの重要インフラが大きな被害を受けた。ほかにも、イラク、ヨルダン、アゼルバイジャン、トルコ、キプロスにある英軍基地、ディエゴ・ガルシア島にある米英軍の共同使用する軍事基地も、イランからのミサイルやドローン攻撃を迎撃したとの報道がある。

 一見すると、イランの報復は闇雲に行われているようだ。しかし、イランの観点からは、米・イスラエルの理不尽な軍事行動に対して、将来の同様の攻撃を阻止するために、反撃しないとの選択肢は取り得ない。そうした中、米国本土を射程に収める大陸間弾道ミサイルを有さないイランとしては、イスラエルおよび地域内の米軍基地を攻撃するのが最も理に適っているといえる。特に米軍基地の受け入れ(土地を提供)をしている湾岸諸国を狙い撃ちにする背景には、これらの国々のリーダーに対して、米国との関係の再考を促したいとの思惑が見え隠れする。


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