変わりゆく中東情勢
その関係性の変化とは?
イランの反撃の規模から、アラブ湾岸諸国に対する注目度は高く、他にも中長期的に影響を受け変化が訪れる可能性のある国々がある。
UAEは近年、イランとの関係改善を模索してきた。サウジアラビアと足並みを揃える形で、16年1月に駐イラン大使を召還しイランとの外交関係を格下げしていた。しかし、22年8月にはUAE外務・国際協力省が、駐イラン大使復帰の決定を発表した。一方のイランも23年4月に、駐UAE大使を7年ぶりに任命、両国が関係改善の姿勢を鮮明にした。
この背景には、サウジアラビア・イランの関係正常化に向けた交渉が進む中で、地域の安定化に向け、域内で孤立を生み出すのではなく、融和の方向に舵を切るべきとのトレンドがあった。地域のことは地域で解決する、というわけだ。隣国であるからこその活発な貿易関係を土台とするUAE・イラン間の強固な経済的事情、イエメン戦争でフーシ派と敵対していたUAEにとり、同派に強い影響力を持つイランとの関係構築が重要であるという要因もあっただろう。
一方で、イスラエルがバーレーン、UAE、モロッコ、スーダンとの間で関係改善をした「アブラハム合意」で、UAEはイスラエルとの関係正常化をした国であり、湾岸諸国の中でも、イランとイスラエルとの狭間で難しい対応を迫られている。加えて、米国への配慮も無視できない。25年5月のトランプ大統領の湾岸歴訪時には、大規模な投資・経済協力を相互に確認した。UAEはバランス外交を模索してきた中で、どう振る舞うべきかを試されている。
また、サウジアラビアは、UAEと同様にイランの反撃によって被害を受けた状況で、米・イスラエルの対イラン戦争に「参戦」するのかを問われる状況にある。しかし、事態は簡単ではない。サウジアラビアは現在、ムハンマド皇太子のリーダーシップの下で「ビジョン2030」の実現に向けて、女性の経済活動への参画を含む、経済成長と国家の発展を見据えた変革期にある。長きにわたると見込まれる、同皇太子の将来の治世を見据えると、国内の安定と近隣諸国との友好関係は必要不可欠だ。
23年3月には、サウジアラビアは中国の仲介により、イランとの関係正常化合意に署名した。ペルシャ湾を挟んで隣に位置するスンニ派とシーア派の大国であるが、イラン・イスラエル関係とは異なりイデオロギー上の対立関係にはなく、実利的な関係構築が可能である。このように、サウジアラビアは、慎重な判断を求められる局面にあるといえる。
また、サウジアラビアは25年9月、パキスタンと「戦略的相互防衛協定」を締結した。背景には、第三国からの侵略という危機に直面した際、核保有国であるパキスタンに頼る必要があるとの安全保障上の動機がある。パキスタンはイスラム教国の中で唯一の核保有国である。サウジアラビアは、ロシアや中国などとも「外交の多角化」を進めている。小括すると、サウジアラビアが米国に原油を提供し、米国はサウジアラビアに安全を提供するという伝統的互恵関係は過去のものとなりつつある。

