2025年12月5日(金)

Wedge OPINION

2025年9月4日

 沖縄は、沖縄戦、戦後の米統治、大規模な米軍基地建設などを経験し、日本本土とは異なる歴史を歩んできた。このため、今もなお「本土」、そして「米国」との間で摩擦やわだかまりが残る。それぞれとの和解を深めることは、日本の国家としての使命であろう。

 戦後80年を迎えた沖縄は今、中国の覇権主義的行動の主要舞台の一つとなっており、二つの和解が進まなければ、中国がその間隙を突き、この地域の軍事的、政治的な安定を揺るがす懸念がある。

2000年7月、クリントン米大統領と稲嶺恵一知事は沖縄県糸満市の「平和の礎」で並んで黙とうした(AP/AFLO)

 中国軍の台湾周辺での活動は一段と活発化し、2025年5月下旬から6月にかけて、新たな警戒すべき事態が起きた。空母「遼寧」と「山東」の2隻が日本周辺の太平洋上に初めて同時展開したのである。

 この展開の意味について、7月18日付の読売新聞は1面トップ記事で、「米空母打撃群の迎撃を想定した演習」だったとする日本政府関係者の分析を報じた。

 注目されるのは、「遼寧」が太平洋沖の東から西に向かい、中国の防衛ライン「第2列島線」を越えて中国方面に進行し、一方の「山東」は、沖縄本島の南から東に向かい、「遼寧」を迎え撃つ動きをしたことだ。つまり、「遼寧」は米空母の役を担い、「山東」は中国空母役となり、米空母迎撃の模擬演習をしていたというわけだ。

 そして、その「遼寧」は、まず演習に向かうため、沖縄本島と宮古島の間の宮古海峡を通り、太平洋に抜けていた。

 宮古海峡は、中国海軍にとって、軍事的に極めて重要な太平洋への〝玄関口〟である。幅・約250キロ・メートル、最大水深は1000メートル超。潜水艦も「深海ルート」で通過できる戦略航路だ。中心部は公海だが、行政的には沖縄県の域内である。

 中国は、こうした軍事的、地政学的な視点から沖縄を重視する一方、歴史的にも琉球王国の時代から沖縄と深い関わりを持ち、近年は県内動向への関心を一層高めている。

 それを肌身で感じてきたのが、沖縄県知事を1998年から2006年まで2期務めた稲嶺恵一氏だ。

 筆者は昨夏、読売新聞全国版で稲嶺氏の回顧録「時代の証言者」を連載した。これに全面加筆し、稲嶺氏と共著の形で戦後80年の沖縄と日米中関係を考えた『苦悩の島・沖縄 二つの和解』(ウェッジ社)が、8月25日に刊行された。詳細は本書に譲るが、まず特筆されるのは、沖縄県が歴史的に中国・福建省との交流が特に深いことである。


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