一方、本土側も、戦後80年の節目だからこそ、特に政治家たちは、若い世代も含めて改めて歴史を知り、真剣に理解することが重要である。沖縄を旧態依然たるイデオロギー体制と盲目的にみなすのは、偏見と無知、歴史への無理解によるところが大きい。それによって真摯な和解の努力は何度も後退してきたのである。
日米の防衛専門家が考える
有事の沖縄に足りないもの
沖縄は、緊迫した安全保障環境下で戦略的重要性が一層増しており、日米は態勢拡充を加速させている。特に、南西諸島の防衛強化のため、自衛隊は、宮古、石垣、与那国の各島に陸上自衛隊の駐屯地を相次いで新設した。有事の際には、まずはこうした駐屯地を拠点に、日米連携が展開されることになる。
しかし、防衛専門家の間では一つの大きな懸念が共有されているという。それは、人や物資を運ぶ滑走路が圧倒的に足りないということである。沖縄では、離島も含め数多くの滑走路がある。いざ有事となれば、軍民共用の那覇空港をはじめ、米軍の嘉手納基地、普天間飛行場などはフル稼働となるだろう。それでも足りない、というのが日米の防衛専門家たちの意見である。
ある日本の専門家は「今、ゼロベースで米側と態勢の協議をすれば、普天間移設先の辺野古が完成していたとしても、普天間は返ってこないだろう。そのぐらい事態認識は切迫している」と話す。
さらに、自衛隊が南西諸島に新設した前述の3駐屯地も、地元の理解と協力なしにフル稼働は難しい。沖縄県民と自衛隊の関係は、沖縄戦の記憶からもともと微妙であった。こうした所に、中国が世論操作で介入する余地があることを日本側は切迫感を持って認識すべきだ。
中国の脅威が「今そこにある危機」として懸念され、日米で南西防衛強化を進めるなら、米側も「米軍基地問題は日本の国内問題」(米国務省幹部)といった他人事のような主張を見直すべき時ではないか。
私見ではあるが、例えば、極端な話をすれば、台湾に米軍を駐留させるぐらいの案を検討してもよいのではないか。むろん、米国の台湾防衛をめぐる基本方針は「あいまい戦略」が柱であり、米軍基地の設置や大規模な部隊駐留などは、これとは正反対のものだ。それを重々承知したうえでの意見である。
中国は近年、台湾への軍事圧力を強め、統一への野心をむき出しにしている。バイデン前米大統領は台湾防衛への介入に向け、戦略の転換を図ろうとしていた。トランプ政権でも、対中強硬派の国防総省ナンバー3、エルブリッジ・コルビー国防次官が中国対応強化を求めている。
同盟国に求めるだけでなく、米国自身にも意識改革を求める。そうした野心的な発想も、日本の首相、そして防衛当局・外交に求められる時だと考える。戦後80年。残念ながら日本周辺の安保環境は緊迫の度合いを高めている。日本は沖縄との和解を深める一方、米国にも一層主体的に向き合う時代に入っている。

