2025年5月23日(金)

大阪 自由都市を支える“民の力”

2025年4月23日

 話を聞けば聞くほど、面白い──。この人にはそう思わせる魅力がある。

 大阪大学名誉教授・吉森保さん(66歳)は、2016年ノーベル生理学・医学賞を受賞した東京科学大学(旧・東京工業大学)栄誉教授・大隅良典さんの一番弟子。体内で不要なたんぱく質などを分解し、リサイクルする現象「オートファジー(自食作用)」研究の第一人者だ。

吉森 保(Tamotsu Yoshimori)大阪大学名誉教授
1958年大阪府生まれ。大阪大学理学部生物学科卒業後、同大学医学研究科中退。ドイツ留学ののち、96年大隅良典先生が国立基礎生物学研究所にラボを立ち上げた時に助教授として参加。その後、大阪大学医学系研究科教授などを歴任。(写真・生津勝隆以下同)

 吉森さんは、高校まで東京、大学から阪大へと進んだ。大阪愛はとてつもなく深い。

 「大阪らしさを考えるには、大阪大学創設の経緯やその存在自体が切り口になりますね」

 取材の冒頭、吉森さんはこう言った。いったい、どういうことなのか。

 「当時、関西には京大があるのに、阪大が必要なのかという意見がありました。阪大は東大、京大などの旧7帝大のうち、国主導ではなく、唯一、地元からの強い要請で創設された大学なのです」

 阪大は1931年、医学部・理学部の2学部体制で創設された。だが、当時は緊縮財政の折も折、国はその必要性をなかなか認めなかった。優先されたのは、日本の近代化であり、そのために優秀な官僚を養成し、社会にとって有為な人材を育成することであった。

 そんな中、阪大は、地元の人たちがお金を集めて創設されたという歴史があるのだ。

 「この民の強さこそ大阪らしさの一つです。阪大が今でも地元企業や自治体との連携が強いのは、こうした創設の経緯と無関係ではありません。しかも、阪大には、誤解を恐れずに言って、変わった研究をしている〝変な人〟が多い!見方を変えれば、他の大学と比べて、自由度が高いと言えるのです」


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