2026年5月12日付フィナンシャル・タイムズは、国のパワーが、規模や経済レベルによってではなく、不均衡を梃として活用する能力によって左右されるようになっていると指摘するナダー・ムサヴィザデの論説を掲載している。
安価なドローンとミサイルを使って、経済規模が小さく制裁で活動を制約されているイランが、ホルムズ海峡を封鎖し、世界で最も重要な石油の要衝を武器化したことで、世界経済はそれに適応することを余儀なくされている。
紅海においては、フーシ派のドローン攻撃によって、海運のリスクプレミアムは跳ね上がっている。多くの海運会社は、この2年間、スエズ海峡を避け、喜望峰ルートを使用するようになり、10 ~14日余計にかかり、費用も嵩んでいる。
西太平洋の領有権争いの島(台湾)において、一つの会社(TSMC)が世界の最先端半導体の90%以上を製造している。NvidiaとAppleの活動も、幾つかの軍の運用も、この狭い地域の設備に依存し、その能力は、あと10年は他の会社によって代替することはできない状況である。
これら三つの例は、同じ現象である。我々は、非対称の時代を生きており、国のパワーは、規模や経済レベルによってではなく、不均衡を梃として活用する能力によって左右されるようになってきている。
不均衡は様々な形態を取りうる。それによって結果が異なってくる。作戦のレベルでは、現代の紛争の力学では「混乱をもたらす者」が有利になる。
ウクライナの安価なドローンがロシアに高額の被害をもたらしている。インフラ・制度のレベルでは、ある主体が保持する立場に他者が依存するということが起こる。
ドル決済、半導体チップの製造、レアアースの加工、ハイパーコンピューター、コンテナ・ターミナル、海底ケーブル修理船、これらの分布は不均衡である。政治のレベルでは、どの国もある政策を一旦採用したとしても、それを継続できるわけではない。
権威主義体制の国家は、対外的に戦略的競争を行うに際しての国内の政治的コストから切り離されている。ところが、民主主義国家は、選挙のサイクルに組み込まれ、そうはいかない。
中国やロシアのような権威主義国家は、数十年かけてインフラ・制度面での要衝を構築することができる。そうしたインフラ面での要衝が今度は圧力をかける武器ともなる。
