第二に、人間の活動が高度に組織化されたことで、情報や物資の流れにおける、ある一点の要衝を押さえたり、破壊したりすることの影響が極めて甚大に及ぶようになっていることがある。論説では、「ドル決済、半導体チップの製造、レアアースの加工、ハイパーコンピューター、コンテナ・ターミナル、海底ケーブル修理船」と多様な例が挙げられているが、ムサヴィザデがいう「インフラ・制度のレベル」である。
民主主義国家は不利に
第三は、近年、大国間競争が激化しているが、ここで論じている「非対称性の武器化」が専制主義国家の得意技としてクローズアップされるようになっている。ムサヴィザデがいう「政治のレベル」である。
「非対称性の武器化」においては、専制主義国家は、いくつかの面で民主主義国家よりも優位に立っている。まず、前述の要衝を形成するための政策手段の投入を長期にわたって実行するのは、専制主義国家の方が民主主義国家よりもはるかに得意であろう。
また、「非対称性の武器化」を実際に発動すれば、相手国も困るが、自国にも困る人が出てくる。中国が日本への措置として、旅行客を行かせないようにしようとすれば、中国の旅行社も見込まれていた利益を喪失することになる。そうした「困る人」を黙らせるも、専制主義国家の方が民主主義国家よりもはるかに得意であろう。
その意味で、「小よく大を制す」は昔からあることだが、ムサヴィザデが着目する三つのレベルにおいて、時代の推移で、従来とは異なった状況が生じている。民主主義国家にとって特効薬はない。要衝で締め上げられるような事態にならないよう、優先度の高い分野から、官民での問題意識の共有と解決を図っていくことが肝要である。
