2026年7月27日(月)

台湾「麗しの島」の実像

2026年7月27日

  今や台湾のみならず、世界経済を率いる半導体製造会社の台湾積体電路製造(TSMC)。経済ジャーナリストの林宏文氏は、上場前の時代から取材者として30年以上にわたり同社を追い続けてきた。そして、TSMCの副社長を務めた陳健邦氏は、同社が発足した黎明期から社内の第一線で活躍してきた。2人をよく知るジャーナリストの野嶋剛氏が、台湾半導体やTSMCをどうみているか、それぞれの視点から話を聞いた。

TSMCの製造拠点は台湾の北から南まで、合計11カ所にものぼる(THE WASHINGTON POST/GETTYIMAGES)

「日本は台湾を利用せよ」
台湾の経済ジャーナリスト
林 宏文氏

林 宏文(Lin Hung-Wen)経済ジャーナリスト 1967年、台湾生まれ。
国立交通大学(現・国立陽明交通大学)卒業。主にハイテク・バイオ業界の取材に長年携わりながら台湾の経済誌『今周刊』副編集長、『経済日報』ハイテク担当記者を歴任。現在は、ラジオパーソナリティーやコラムニストとして活躍中。著書に『tsmc 世界を動かすヒミツ』(CCCメディアハウス)など。(LIN HUNG-WEN)

 6月に台北で開催されたテクノロジー・IT見本市のCOMPUTEX TAIPEI(コンピューテックス台北)の盛り上がりは空前絶後で、昨年より2万人多い11万人が参加し、世界中から集まった記者の数もすごかった。プレスセンターに席がなくなり、記者たちは廊下に座って仕事をしていた。

 特に訪台した米エヌビディア最高経営責任者(CEO)のジェンスン・ファンの一挙手一投足が注目された。エヌビディアの半導体は1年に一世代が入れ替わる。エヌビディアの次世代半導体「ベラ・ルービン」も今年後半に実用化される。規格が異なれば技術も異なる。エヌビディアのニーズを満たすのは簡単ではない。だが、我々はファンと一緒に忙しく走り続けるしか方法はない。なぜなら彼は多くの注文をくれるからだ。今回の来訪でファンは1000億から1500億米ドルを台湾で購入すると言った。しかし、それでも彼にとっては小さな金額である。

 世界はAIのビジネスチャンスを掴もうと必死だ。だが、それが可能なのは米国、台湾、中国、韓国、そして日本である。だから台湾も韓国も日本も株価が共通して上昇している。株価は経済のファンダメンタルを反映する。米AMD(アドバンスト・マイクロ・デバイセズ)や米インテルもCPUの注文で業績が向上している。なぜならAIには必ずCPUが必要になるからだ。

 台湾の半導体は、分業が確立し、健全な業界競争もあり、勤勉な人材も豊富だ。もう一つ、台湾の競争力の源泉は米国とがっちり協力関係を結んでいる点である。米国のクアルコムもエヌビディアもインテルも今回のコンピューテックスに幹部が訪問し、台湾の供給網に感謝すると語っている。台湾の供給力が現在のAIブームの局面では非常に重要になるからだ。

 よくR&Dというが、R=リサーチ、つまり研究は米国が主体である一方、D=デベロップメント、つまり開発、特に商品化について台湾企業のスピードは非常に速い。台湾は長年米国企業の要望に素早く対応する方法を学んできた。一方、台湾はリサーチがそれほど得意ではない。ノーベル賞受賞者を輩出する日本には優れた基礎技術があり、半導体製品の設計ができれば台湾に製造を任せればいい。そうすれば競争力のある製品を生み出すことができる。


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