2026年9月22日(火)

オトナの教養 週末の一冊

2026年9月22日

 現代の組織は今、静かに崩壊している。優秀なリーダーほど「強くあらねば」と自分を追い込み、部下はついてこない。だが1400年前の中国に、まったく逆の発想で国を治めた皇帝がいた。

 名は李世民、唐の第二代皇帝・太宗である。兄弟を殺して即位したこの男が、なぜ「自分の弱さを認める」ことでリーダーシップの模範とされたのか。その言葉をまとめた『貞観政要』(呉兢・原作)を平易な現代語にまとめ直した『超約版 貞観政要』(夏川賀央・訳者、ウェッジ刊)から、現代にも通じるリーダー論を読み解く。

(National Palace Museum, Public domain, via Wikimedia Commons)

兄弟を殺して即位した皇帝の矛盾

 太宗の出発点は血なまぐさい。隋末の混乱期、武将だった父・李淵を反乱に導き、唐建国の最大の功労者となったのが太宗だった。しかし戦功を上げるほど、皇太子だった兄・李建成との対立は深まる。暗殺計画を察知した太宗は先手を打ち、兄と弟を殺害する「玄武門の変」を起こした。

 この勝利によって太宗はナンバーワンの地位を得るが、同時に「兄弟を殺した自分が国を治めていいのか」という重い自問を抱えることになる。ここで彼が選んだのが、敵側についた家臣の罪を一切問わないという決断だった。後に太宗の右腕となる魏徴も、もとは兄・李建成の側近である。過去を清算し、対等な国づくりを目指したこの姿勢が、後世「貞観の治」と呼ばれる理想的治世の土台になった。


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