部下の欠点探しより長所を活かす発想
人材活用における太宗の姿勢も特徴的だ。家臣の王珪に他の重臣の評価を求めた際、王珪は自分の不得意な点を正直に認めつつ、他者の長所を的確に語った。太宗はこうした「互いの違いを認め合う」関係性を重視し、欠点をあげつらう風潮を強く戒めている。「些細な行為で官僚の足をすくおうとする者は、人を欺こうとした罪に問う」とまで発言したほどだ。
短所を抑え、長所を活かして適材適所に配置する。この発想は、離職率の低い企業が実践するマネジメント手法とも重なる部分が多い。
1400年前の言葉が今も読まれる理由
太宗の治世はわずか二十数年で終わり、唐という大国はその後また混乱に陥っていく。しかし彼が家臣と交わした言葉の数々は、モンゴルのフビライ・ハン、日本では北条家や徳川家康、明治天皇にまで読み継がれてきた。時代や国境を超えて評価される理由は明快だ。自分の弱さを認め、部下の力を借りながら成長し続けるリーダー像が、そこにあるからである。
新型コロナ以降、離れていても信頼し合える上下関係が求められる今のビジネス環境は、太宗が目指した人間関係と本質的に近いという指摘もある。予測困難な時代に、一人の力だけで組織を導くことはできない。だからこそ、1400年前の対話がいま再び読む価値を持つ。『超約版 貞観政要』は、膨大な原典から現代人が読みやすい形にエピソードを抽出し、訳者による解説を添えた一冊だ。歴史書としてだけでなく、明日から使えるリーダー論として手に取ってみてほしい。

