2026年10月23日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年10月23日

 2026年9月30日付ニューヨーク・タイムズは、2003年から続いていた米軍のイラク駐留が終了したが、イスラム国(IS)復活の恐れ、親イラン民兵の跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)などからイラクが実効的な主権と安定を取り戻せるかは不確かだという解説記事を掲載している。

(AP/アフロ)

 米軍は26年9月30日、イラクから正式に撤退した。03年の侵攻以来、途中の撤退期間を挟んで続いた軍事駐留が終わり、今年駐留していた 2500人も全員撤収した。

 撤退は24年にバイデン政権とイラク政府が合意したもので、トランプ政権は対イラン戦争中にもかかわらず期限を守った。背景には、イラクやアフガニスタンでの戦争に対する米国内の疲労と、中東への関与を後退させようとする意向がある。

 米国によるフセイン政権打倒と11年までの占領は、宗派間の流血と反乱を伴い、米国人約4500人、イラク人11万5000人以上が犠牲になった。長年抑圧されていたシーア派が権力を得る一方、特権を失ったスンニ派との対立が激化した。

 米軍は 14年、ISを掃討する国際連合軍を率いて戻った。IS はイラクとシリアの広大な地域を制圧し、シーア派住民の虐殺、人質殺害、ヤジディ教徒女性の奴隷化等を行った。

 現在、バグダッドでは防爆壁が撤去され、商業施設やレストラン、建設現場が活気を取り戻している。政府は撤退を3日間の「主権の祝典」で祝った。

 だが、国民の喜びには不安が入り交じる。11年の撤退後に IS が台頭した記憶に加え、今回は親イラン民兵の増長や政府との衝突が懸念される。

 最大の課題は、政府が民兵組織を統制できるかである。イランの支援を受け、米国の占領に対抗するために結成された民兵は、多数の米兵を殺害し、宗派間の流血にも関与した。14年以降の対IS戦でさらに拡大し、軍事力だけでなく、政党を通じて国家機構にも深く浸透した。

 米国は民兵の武装解除を強く要求している。米国はイラクの石油代金を受け取る米国内の銀行口座を通じ、同国へのドル現金輸送を管理し、今年は一時停止によって圧力を行使した。

 一方、イランは、戦争中の攻撃や地域の混乱、世界経済への打撃に役立つ民兵組織を維持する決意を固めている。イラクは、米国の金融面の圧力とイランの軍事・政治的影響力との間に挟まれている。


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