2026年11月3日(火)

巨大災害時代を生き抜く

2026年11月3日

 「こわい」。すさまじい自然の力を疑似体験して頭に浮かんだのは、「一体この状況で、どうやって命を守ればいいのだろう」という問いだった。

「水害の怖さを知り、命を守る行動をとってほしい」と話す田辺さん(WEDGE)

 JR錦糸町駅から徒歩10分の場所にある東京消防庁都民防災教育センター「本所防災館」では、館内の高度なシミュレーターを用いた「防災体験ツアー」を無償で提供している。なかでも「自然災害コース」では、火災時の煙や暴風雨、都市型水害、地震の疑似体験ができる。昨年度の入館者数は過去最高の12万人を超えた。その1割が海外からの旅行者や在日外国人だ。同館課長代理の北村真二さんによると、「ここまで疑似体験に特化した施設は、全国でも、世界的に見ても珍しいと思います。今年発生した熊本地震や千葉豪雨以降、来館者はさらに増えました。『自然災害コース』の予約は、5カ月先まで埋まっています」。

 小誌記者は同館インストラクターの田辺浩一さんの引率で自然災害コースに参加した。最初の煙体験は、火災が発生した建物から避難するものだ。田辺さんは言う。

 「煙は上に昇る性質がある。だからこそ、姿勢を低くしてください。煙は『毒』ですから、いかに吸わずにいられるかが生死を分けます。また、煙や停電で視界を奪われたときは、壁から手を離さないこと。壁をつたえば、出口にたどり着ける可能性が高まります」

 田辺さんの説明で、ただ知っていただけの避難手順が、逃げ切るための確実な方法として現実味を帯びる。

 続いての暴風雨体験ではレインコートを借りて専用の部屋に入り、時雨量50ミリ、風速30メートルを体感した。田辺さんから、「顔を下に向けて、目の前の安全バーを握ってください」と指示が出た直後、自分の知っている「雨」や「風」ではない何かに襲われた。あまりの威力に目が開けられない。この状況下では移動すらままならないだろう。事前の避難がいかに不可欠か、身をもって納得させられる。

 都市型水害体験では、浸水して水圧がかかった状態の自動車や、地下のドア開放体験ができる。設定されたのは20センチ・メートルの浸水。大人の脛ほどの深さだ。運転席のモックアップに座り、勢いをつけて扉に全体重をかけるが、びくともしない。

 「水圧の強さは想像以上です。車のフロントガラスは合わせガラスのため、割れにくく散乱しない構造になっています。脱出を試みる際は、割れやすいサイドガラスの四隅をハンマーや、ヘッドレストの金具部分で強く叩いて割るようにしてください」と田辺さんは教えてくれた。


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