2026年11月2日(月)

大膨張する日本の借金

2026年11月2日

 ジョージ・W・ブッシュ政権からオバマ政権時代に米軍制服組トップの統合参謀本部議長を務めたマイケル・マレン氏は、現役時代も退任後も、一貫して次の趣旨の発言をしている。

「国家安全保障に対する最大の脅威は我が国の債務である」

 これを単なる「軍事予算拡大の口実」「軍人による、軍人のための議論」だと矮小化することはできない。

高市首相は2年後に消費税率を戻せるのか?(KYODONEWS/GETTYIMAGES)

 マレン氏は、膨らみ続ける債務が将来的な米国の軍事や外交の選択肢を狭め、さらには、経済成長に必要な投資をも毀損しかねず、国家の持続可能性を阻む〝足かせ〟になると見抜いていたからである。

 この指摘は日本にも当てはまる。「強い安全保障」と「強い経済・財政」は表裏一体であり、両者のバランスを保つことが重要だからだ。

 しかし、昨今では「債務残高対GDP比」の減少傾向を根拠に、さらなる財政出動の正当性を主張する声もある。加えて消費減税の議論も進んでいる。こうした議論に抜け落ちている視点はないのか─。今から20年以上前の2005年、国民的議論の「たたかれ台に」という思いから、現役官僚でありながら『決断! 待ったなしの日本財政危機─平成の子どもたちの未来のために─』(東信堂)を上梓した元財務次官の矢野康治氏に、現下の日本の財政状況と率直な思いを聞いた。

 インタビューから浮かび上がってきたことは、日本にとって「財政再建は待ったなし」という厳然たる事実だ。そして何より、「将来世代からの収奪」を一刻も早く止めるべきという良質な危機感である。これらの現実に、政治も、霞が関も、国民も、そして自戒を込めて、我々メディアも真摯に向き合う必要がある。(聞き手・構成/編集部 大城慶吾)

矢野康治(Koji Yano)元財務事務次官
1985年一橋大学経済学部卒業、大蔵省(現・財務省)入省。大臣官房審議官(主税局担当)、大臣官房長、主税局長、主計局長などを経て、2021年7月から1年間、財務事務次官を務めた。(WEDGE)

 コロナ禍が明けて以降、債務残高対GDP比は減少傾向にあり、高市早苗内閣もその点を強調しています。日本が財政再建を目指すうえで、債務残高対GDP比の縮小は、歓迎すべきことです。

 しかし、減少傾向だからと言って、「財政がもう大丈夫だ」と判断するのは早計に過ぎます。

 そもそも、日本の債務残高対GDP比は先進国のみならず、世界中で最悪です。

 そして、長らくのデフレからインフレ局面に移りつつある中で、歳出が物価上昇に伴って自ずと肥大化するとともに、金利上昇で利払い費も年々かなり大幅に増えていくことが事実上確定しているからです。

 「その状況を放置してきたのは財務省の責任ではないか」「あなたたちも共犯だ」というご批判やご意見があることは重々承知しています。現役時代にこの状況を食い止めることができなかった私自身にも、責任の一端があり、猛省しています。

 しかし、そうした反省の上に立ちつつ、様々なしがらみを超えて、果たすべき責任が、今なおある。私はそう考えています。そこで、現下の状況に対する私なりの見解を述べるとともに、日本にとってなぜ財政再建が不可欠なのか、客観的な事実に基づいてお伝えしたいと思います。


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