2026年11月2日(月)

大膨張する日本の借金

2026年11月2日

 他国の真似をする必要はないのですが、世界標準たる青い領域と日本のスキマは何かと言えば、借金(赤字国債)です。ごく一部は、社会保障を他国より切り詰めたり、他の税や保険料を他国より重くしたりして賄うことがありますが、現実的にはスキマの大宗は赤字国債であり、世界一の少子高齢化社会を子孫へのツケ回しで補てんしながら運営しているのです。

 「5%から10%に引き上げたばかりではないか」と思う方もおられるでしょうが、それを描いたのが青い点から赤い点への矢印です。世界標準に近づいてなどおらず、並行移動、ないし少し遠ざかってさえいます。

 そんな日本において、国政論議では、消費税率の引き下げや廃止が、多くの与野党の間で議論されているのです。その間にも少子高齢化は待ってくれませんから、日本は上に進みます。上に進みながら左に進めようという議論です。世界からさらに離れていく点線の矢印で示したような議論を多くの与野党が〝真顔で〟行っているのです。

 これをどうやって中学生や高校生に説明したらよいのでしょうか。

 「今だけ、金だけ、自分だけ」という流行り言葉がありますが、その戒め通りではないでしょうか。

先送りの「不作為」をやめ
未来へのビジョンを示すべき

 昨今は、時代がまるで帝国主義に逆戻りしたかのような印象があります。しかも、「米国第一主義」のトランプ大統領が象徴するように、「〇〇ファースト」という言葉にあふれ、領土の略奪や戦争が後を絶ちません。「お前のものは俺のもの」とばかりに、略奪しなければ気が済まないのかと、悲しい気持ちになります。

 しかし、私はここで、さらにはっきりと申し上げたいことがあります。 「略奪」という言葉を比喩的に用いるならば、大国が行っている行為と、財政に関して日本が行っている行為は変わらない、ということです。

 将来世代にツケを回し、安易な減税やバラマキを続けるということは、「将来世代からの収奪」にほかならないからです。現代を生きる私たち日本人は、このことを強く自覚しなければなりません。

 財政とは、国家の持続可能性であり、未来、あるいは将来世代に対する私たちのモラルそのものです。

 政治も、霞が関も、そして国民も、「今だけ、金だけ、自分だけ」の風潮から脱却しなければなりません。特に現在の政治には、その傾向が顕著だと言わざるを得ません。

 かつて米国初代大統領のジョージ・ワシントンは退任演説で、「強さと安全の非常に重要な源泉として、公の信用を大切にせよ」と述べ、平時の努力によって自らの債務を返済し、「我々自身が負うべき負担を後世に先送りするな」と訴えました。現代日本にも通じることでしょう。

 かの復興の名指揮官たる二宮尊徳は、「経済なき道徳は寝言である」との遺訓を残しています。事業継続性(経済)のない施し(道徳)は白昼夢(寝言)に過ぎないと断罪したのです。

 国民は、決して愚かではありません。各地で講演をすると、多くの方々が私の話に真剣に耳を傾けてくださいます。新聞などの世論調査で、単に「減税に賛成か」と問われれば、賛成が多くなるのは自然なことです。しかし、「財源の当てもない減税ですが賛成ですか」と問われると賛否が逆転します。これは、国民が、きちんと情報を示され、誠実に説明されれば、難しい財政問題についても理解し、判断する力を持っている「証し」だと私は思います。

 だからこそ、財務省を含む霞が関は、説明責任から逃げることなく、不都合な真実であっても、できるだけ分かりやすく情報発信していくことが、これまで以上に求められています。政治家も、それを率先垂範ないし先導すべきであって、不都合な真実を語らせないようなことでは〝いつか来た道〟だと思います。

 膨大な債務を積み上げてしまった私たちの手で、「将来世代からの収奪」を一刻も早く止め、未来の日本人に対して胸を張って引き継げる社会をつくることこそが、今を生きる私たちの果たすべき責務だと思います。

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Wedge 2026年10月号より
大膨張する日本の借金 「国民総ゆでガエル」から脱却を
大膨張する日本の借金 「国民総ゆでガエル」から脱却を

日本の借金が大膨張を続けている。債務残高対GDP比は200%を超え、世界最悪の水準にある。こうした中で、「消費減税」が打ち出されたが、この選択の先に待ち受けているものは何か。もちろん、本当に必要な支出もあり、「借金=すべて悪」とは言い切れない面もある。しかし、あまりにも身の丈を超えすぎていないか。将来世代に過大な負担をかけないためにも、適切な給付と負担は不可避であり、それこそ民主主義の基本だ。財政再建に向けて、打開策はゼロではない。現実を直視し、今こそ、新たな一歩を踏み出さなければならない。


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