米国の中間選挙まで一週間を切った。中間選挙に関して、「政権党が議席を減らす」という法則があることは知られているだろう。トランプ大統領に対する支持率が歴史的な低さを示していることを考えれば、この法則は今回も当てはまると思われる。
そして、もう一つ重要な法則は、「現職の議員の再選率が9割を優に超える」ことだ。議会に対する支持率は長きにわたって20%以下で(現時点では16%)、国民は議会の在り方を変えてほしいと願い続けている。だが、選挙をすると現職候補の大半が再選を果たすのである。
このことを考えるならば、選挙結果を予測する上で重要になるのは、現職候補が出馬していない選挙区の動向ということになる。今回の選挙がややこしいのは、その数が70以上と例外的に大きいことである。その背景には、トランプ大統領がもくろんだ選挙区再区割りの動きがある。
活発化した区割りの変更
米国では、10年ごとに行われる国勢調査を受けて、連邦議会下院の435議席が各州に割り振られ、各州内で一票の差が生じにくいように区割りが見直される(50州に含まれないプエルトリコや首都ワシントンD.C.、グアムなどの住民は投票権を持たない)。区割りが州議会によって行われる州もあれば、超党派の委員会や独立委員会が実施する州もある。
2020年の国勢調査結果を受けて、各州は21~22年に区割りを行った。通例ならば選挙区割りがいったんなされると、10年間維持される。だが今年に関しては、共和党が支配する州を中心にそのサイクルを待たず、区割り変更の動きが活発化した。
そのきっかけを作ったのはトランプ大統領だ。もちろんこれまでにも、区割りの合憲性に疑念が示されて裁判所により改善命令が出されるなどして、途中で区割りが見直されたことはある。訴訟以外の理由で再区割りが行われたのは、70年以降では03年のテキサス州と05年のジョージア州、そして今回のオハイオ州のみだった。
だが、トランプ大統領は、共和党劣勢との予想を受けて、共和党が優勢な州に対して選挙区割りを見直すように依頼した。それを受けてテキサス州が再区割りを行い、共和党の獲得議席が5増えるのではないかと報道された。それに対抗してカリフォルニア州知事のギャビン・ニューサムが同州でも再区割りを主導し、民主党が同州内で5議席増大させる見込みだと報じられた。
これに加えて、4月29日に出された連邦最高裁判所の判決も、再区割りの動きに拍車をかけた。米国では82年公民権法が、黒人多数派選挙区の創出を要請していると解されてきた。人種・肌の色・以前の隷属状態を理由に投票権を制限することを禁じた憲法修正第15条を現実化するために65年に投票権法が定められたが、82年法は市民が政治過程に参加し、代表者を選出する機会を損なう慣行も禁止した。
マイノリティの選挙区を分散させたり、マイノリティを一つの選挙区に押し込めたりしてその影響力を弱めることを違法とするよう主張されるようになり、連邦最高裁もその主張を原則として認めていた。だが、今年4月の判決で最高裁判所は、その根拠とされる規定を違憲と判断したのである。
