懸念される弊害
本記事の冒頭で、米国で連邦議会に対する支持率は低いものの、現職候補の再選率は高いことを紹介した。これは、米国民が議会の変革を求めているにもかかわらず、選挙では議会が変わらないことを意味しているといえる。
この点、トランプ大統領の指示の結果として連邦議会が変わる可能性が出てきたことは、一面では評価すべきことかもしれない。だが、その結果として、多くの有権者にとってより好ましい(あるいはましな)候補が出馬することになったかというと、そういうわけではなさそうだ。党派的な形で区割りが行われたという認識がさらに強まると、連邦議会下院に対する信頼度が一層低下する危険もあるだろう。
また、選挙の予測可能性が低下すれば、長期的に政策形成を目指す人物が政治家を志さなくなる懸念もある。そもそも選挙区再区割りが期待通りの結果につながるかについては疑問の余地があるが、選挙ごとに再区割りを行ってよいという考えが一部有権者の間で持たれるようになると、再区割りを行わなければ反発を招くという事態を生む可能性もある。どのような影響を及ぼすかがわからないことをするために、多額の財政的・人的資源が投じられるようになってしまう。
トランプ大統領は、とんでもないパンドラの箱を開けてしまったということかもしれない。このような時期に行われる再区割りに否定的な見解が表明されるのも理解できるだろう。
共和党に有利?
共和党に有利な形で選挙戦を展開するというトランプ大統領の試みは成功しているのだろうか? アラバマ、カリフォルニア、フロリダ、ルイジアナ、ノースカロライナ、オハイオ、テネシー、テキサス、ユタの9州が、再区割りがなされた選挙区で下院選を戦うことになった。
バージニア大学の研究所が5月22日に発表した調査によれば、共和党は6から10議席を上積みする可能性があるとされた。ただし、再区割りが議席の増減に及ぼす影響は状況によって変わることもあり、予想数には幅がある。
各種報道によれば、共和党は、テキサス(最大5議席)、ノースカロライナ(1議席)、オハイオ(最大2議席)、フロリダ(最大4議席)、テネシー(1議席)、ルイジアナ(最大2議席)、アラバマ(1議席)などの州で議席を増やす可能性があるとされる。他方、民主党が増やす可能性があるとされているのはカリフォルニア州(最大5議席)とユタ州(1議席)のみである。
民主党の方が苦労しているのは、民主党が優勢州では選挙区割りを独立した委員会が実施するよう定めているなど、ゲリマンダリングを行う上での制約が大きいためだ。また、バージニア州やニューヨーク州では民主党に有利な形で区割りを行う案が出されたのに対し、州最高裁判所がそれを阻止している(なお、共和党優勢州のミズーリでも州最高裁が同様の判断を下している)。
