9月に続いて10月にも、2026年米中間選挙の注目州である南部テキサス州の州都オースティンの民主党フィールドオフィス(戸別訪問や有権者登録などの運動を行う現地事務所)に入り、現地スタッフの戸別訪問を観察しながら現地調査を実施した。
中間選挙まで5日(執筆時点)となり、各種メディアは主として投票結果を予想し、全体像を見る傾向があるが、筆者はこの時期においても戸別訪問にこだわってきた。民主主義の根底にあるのは草の根運動であると考えるからだ。現地で有権者の家を訪問し、彼らの生の声を聞くたびに、皮膚感覚で理解し、自分の目で確かめることの重要性を強く感じてきた。
「戸別訪問の力」に気づかされたある会話の一言が、今でも研究を支えている。それは、2012年米大統領選挙のテレビ討論会であった。場所はニューヨーク州の郊外、討論者はバラク・オバマ大統領とミット・ロムニー元知事(共に当時)であった。その会場で、保守系の米FOXニュースの記者と軽い会話を取り交わしているときに、彼は日本の選挙について質問をしてきた。
そこで、「日本では戸別訪問が禁止されています」と回答すると、彼は驚きを隠せない表情をして、「戸別訪問がなくて、どうやって現職議員を倒すんだ」と、逆に質問を投げかけてきた。今度は筆者が驚く番だった。
日本では戸別訪問が公職選挙法138条で禁止されている理由は、まず買収や利益誘導などの不正が起こりやすいことである。しかし、米国では戸別訪問の際、自宅に入らないという“ルール”があり、日本で挙げられているような密室状態に対しては予防的措置がとられている。その会話から筆者は「戸別訪問の力」を知ることになった。
以下で、9月と10月にテキサス州と中西部ミシガン州で、民主党の戸別訪問のやり方がどのように変化していたのか紹介してみる。
GOTV
今回、筆者はオースティンの民主党フィールドオフィスの責任者と地域ディレクターの戸別訪問に同行した。この時期、各陣営は有権者を投票所に出向かせることを目標に、GOTV(Get Out The Vote:投票に行かせよう)の運動を行う。運動員は、ターゲットになっている有権者の家を訪問し、①民主党候補を支持しているのか、②投票するのか、の2つの質問をしていた。民主党候補支持を表明し「投票する」と回答した有権者に対しては、さらに投票所で投票を行うのか、郵便投票をするのか、追加質問をして結果を記録していた。
2012米大統領選挙における激戦州南部バージニアのオバマ選挙対策事務所でも調査をしたことがあったが、そのときとポイントが違っていた。当時、オバマ陣営では、GOTVの際、「コミットメントカード」と呼ばれるカードを用いていた。
運動員は、投票所に出向くと回答したターゲットとなっている有権者に対して、「投票日は何時に投票に行きますか。午前ですか、午後ですか、それとも夕方ですか」と時間帯を聞き出し、有権者に投票に出向く時間を考えさせた。有権者が投票に行く時間を述べると、運動員は時間帯が印刷されたコミットメントカードにマークを入れ、時間帯の部分を半券のように切り離して有権者に渡し、冷蔵庫など目の届くところに貼って置くように促した。そうやって、オバマ陣営は有権者にコミット(関与)させ、確実に票を獲得していった。
オバマ選挙対策事務所のやり方と比べてみると、テキサス州民主党選対本部は、現地事務所からの報告で獲得票数を把握することに重点を置いているようにみえた。
