2026年10月20日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年10月20日

 パランティア社の防衛部門責任者を務めるマイク・ギャラガー(元米下院議員)が、「米中間のAI競争と台湾問題は一つの安全保障上の課題として収斂しており、中国はAIを利用し台湾を奪い、世界を支配する超大国として米国に取って代わろうとしている」とする論説を9月24日付けウォールストリート・ジャーナル紙に寄稿している。概要は次のとおり。

(seungyeon kim/jixiediyigan/gettyimages・新華社/アフロ)

 仮に、2028年に中国が台湾を封鎖し侵攻すれば、米国は経済的な「ハルマゲドン」に直面しかねない。最先端AIの開発は止まり、データセンター建設は凍結され、市場は暴落する。米国は、AI産業に不可欠な先端半導体の供給を台湾に大きく依存しているからだ。

 台湾積体電路製造(TSMC)は世界の最先端半導体の約90%を製造している。米国は国内の半導体産業振興を目的とするCHIPS・科学法(CHIPS法)によって半導体製造の国内回帰を進め、TSMCのアリゾナ工場ではNVIDIAの先端Blackwellチップの量産も始まった。しかし、そこで製造されたチップも最終工程である先端パッケージングのため台湾に送られている。

 アリゾナで先端パッケージング施設が稼働するのは29年の予定だ。時間は尽きつつある。

 一方、中国は台湾への軍事的圧力を強めている。習近平は台湾問題を永遠に先送りすることはできないとしており、人民解放軍に27年までに台湾侵攻能力を整えるよう求めたとされる。

 中国軍は部隊を再編し、ミサイル、水陸両用戦力、艦船、航空戦力を増強し、台湾周辺で大規模な軍事演習を繰り返している。21年に米インド太平洋軍司令官フィル・デービッドソンは、中国による台湾への脅威が6年以内に顕在化すると警告した。

 同時に、AIも重大な転換点に近づいている。アンソロピック社のダリオ・アモデイは、AIは「歴史上最も強力で戦略的な技術」となり、国家の軍事力と経済力を規定する「最重要な要因」となるだろうと言う。中国の台湾侵攻能力が高まる「デービッドソン・ウィンドウ」と、AIが国家間の力関係を大きく変える「ダリオ・ウィンドウ」が重なりつつある。

 米国がAI競争で先行し、その差を中国が埋められないと北京が判断すれば、AIで決定的に劣勢になる前に、台湾に侵攻する誘因が強まる可能性がある。中国にとって、台湾は政治的な「統一」の対象であるだけではない。台湾は、AIに不可欠な先端半導体の生産拠点でもある。

 中国はAIの世界的主導権を握ろうとしている。しかし、負けつつあるゲームを続けるより、ゲーム盤そのものをひっくり返すという選択肢が生じる。

 このため台湾防衛は、米国の安全保障戦略だけでなく、経済戦略、AI戦略の中核に据えなければならない。台湾は国防費を国内総生産(GDP)比約4%まで引き上げ、ドローン能力を増強している。

 米国も台湾向け武器売却の滞留を解消し、FMS(対外有償軍事援助)の手続きを迅速化すべきである。同時に、中国が侵攻すれば迅速かつ厳しい経済的代償を課すことを明確にし、金融制裁を事前に準備するとともに、同盟国との共同対応を整えておく必要がある。


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