他方、民兵は、米軍撤退を自らの抵抗が勝ち取った成果として宣伝した。有力組織カタイブ・ヒズボラの指導者は、イラクが米国の対イラン制裁に従い続ければ、様々な手段で倒すと警告している。イラクは、米軍撤退は対テロ戦の終了ではなく、自国の安全に全面的責任を負う段階への移行だとしている。
特に不安を抱くのがクルディスタン地域だ。90年代以来、米国の航空支援を自治の基盤としてきたクルド人は、シリアのクルド勢力が米軍撤退後に中央政府の統制下に入った経緯を注視している。
今年はイランと親イラン民兵から繰り返し攻撃され、防空能力の欠如も問題となった。米国は訓練と情報支援の継続を約束するが、今後の安全保障協力は未確定だ。
領空と国境を管理できていないことも、主権回復を妨げる。サウジの東西石油パイプラインへの攻撃がイラクから行われた疑いがあり、イラク当局者は親イラン民兵がイランの工作員を支援したとみている。イスラエルによる砂漠内の秘密基地設置や、トルコ軍の北部駐留も、政府の統制不足を示す。
米軍撤退は一つの時代を終わらせた。しかし、イラクが外部勢力の干渉と国内の武装勢力を抑え、実効的な主権と安定を確立できるかは、なお不確かである。
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イラクの複雑な宗派・民族構成
イラクは世界第5位の確認済み原油埋蔵量を持つ有力産油国であり、人口約 4600万人、国土の広さは43.4万平方キロメートルの中東の大国である。そればかりでなく、イラン、トルコ、シリア、ヨルダン、サウジアラビアおよびクウェートと国境を接する地政学的にも重要な位置にある。しかし、03年のイラク戦争後、混乱状態が長く続いている。
問題は、03年のイラク戦争がパンドラの箱を開けてしまったことだ。最大の問題は、イラクの複雑な宗派・民族構成だ。
