2024年11月21日(木)

医療神話の終焉―メンタルクリニックの現場から

2024年4月17日

 いじめ防止対策推進法は、実によくできている。眠らせておくには惜しい。いじめの防止に関わるすべての職種が、その目的のために使えばいい。

 同法は、その「基本理念」として、第三条に「いじめの防止等の対策」は、「いじめが児童等の心身に及ぼす影響その他のいじめの問題に関する児童等の理解を深めることを旨として行われなければならない」としている。医師、とりわけ、精神科医は心身の専門家である。だから、精神科医がこの法に触れてはいけない理由はない。使うべきである。

 また、児童・生徒とその親御さんにおかれては、精神科医をもっと使ってほしい。「法と医者は使いよう」、それが、筆者の意見である。

 本連載の2023年2月1日に記した「1枚の診断書がいじめ自殺を防ぐ 医師だからできること」は、さいわい多くのいじめ被害者・家族に読まれた。そこに掲載された診断書サンプルを求めて、筆者のところにお越しになる方もきわめて多く、新幹線・飛行機を使って遠方から受診なさる方もいる。ひところは、外来初診患者がいじめ被害者ばかりのときもあった。

 受診してきた児童・生徒のなかで、本人・家族から話を伺って、「いじめ」の定義に該当しなかったケースは一例もない。それどころか、「重大事態」に該当するケースばかりである。

 精神科医の筆者の目から見ても、明らかに「いじめにより当該学校に在籍する児童等の 生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認める」(法第 28条第1項第1号)からである。


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