2024年5月16日(木)

医療神話の終焉―メンタルクリニックの現場から

2024年4月17日

 校長も教師も、普段は生徒に対して、「勉強は日々の積み重ねが大事。試験前の一夜漬けでは身につかない」と言っている。しかし、「いじめ防止対策推進法」については校長先生だって一夜漬けである。

 でも、それでいい。たとえ一夜漬けの勉強でも、それで大山を動かすパワーを持っているのが校長である。

 筆者はこれまで、いじめ防止対策推進法に則った診断書を発行して、校長先生に無視されたことは一度もない。もっとも、感謝されたことも一度もないのだが、筆者としては、誠意と情熱をもって一夜漬けに取り組んでくださった校長先生には、衷心より感謝の意を表したいと思う。

 読者の皆様も学校時代を思い起こしていただきたい。おわかりであろう。一夜漬けがいかに大変かということが。

抱え込みは許されない。組織的対応が必要である

 担任教諭は、抱え込んではならない。校長は担任に丸投げしてはならない。その点は法の条文に明記されている。

 担任教諭の抱え込みがある場合は、診断書において、法がそれを許していないことを指摘する。

 「患者・家族によれば、本件の対応は現在のところ担任の〇〇教諭1人が引き受けているようですが、いじめ防止対策推進法第23条は、学校教職員に『学校への通報その他の適切な措置をとるものとする』とあり、単独での抱え込みが許されないことは、法に明記されています。」

 校長が担任教諭に責任転嫁しているようであれば、以下のように記す。

 「患者・家族によれば、本件に関して、学校長が対応せず、担任教諭だけが対応しているようですが、いじめ防止対策推進法第23条第2項および第3項は、事実確認、結果の学校設置者への報告、いじめへの介入、再発防止、当該児童への支援等を、学校の責任において行うこととしています。同法は、学校による担任教諭への責任転嫁を許していません」

いじめの隠蔽は許されない

 学校は、被害児童・生徒、およびその保護者に対して、説明責任を負う。継続的に支援し、情報を提供しなければならない。そのことも法に記されている。

 学校側に隠蔽の徴候がわずかでもある場合、直ちに診断書を書いて、それが許されないことを指摘する。

 「患者・家族によれば、本件に関して、被害児童・保護者に対する支援もなく、説明を受ける機会も与えられていないとのことですが、同法第23条第3項は継続的な支援が必要であるとしており、同第5項は、児童生徒・家族への情報提供を行わねばならないとしています。最悪の事態(当該生徒の自殺等)を避けるためにも、直ちに必要な支援・説明を行ってください」

 また、いじめとはいえ、暴行・傷害に相当する事象が確認されている場合、学校は警察に通報しなければならない。ここにおいても、学校はしばしば秘密主義である。その点についても、法の条文を引用して、指摘する。


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