2024年12月7日(土)

エネルギー確保は総力戦 日本の現実解を示そう

2024年11月17日

農山村地域で小水力発電の開発は、地域に新たな収益と活路を生み出す突破口となり得る。「Wedge」2024年9月号に掲載されている「エネルギー確保は総力戦 日本の現実解を示そう」記事の内容を一部、限定公開いたします。

 農山村地域で小水力発電の開発は、地域に新たな収益と活路を生み出す突破口となり得る。

福井県池田町の「水海川水力発電所」。写っているのは地元小学校の同窓会のメンバー(WEDGE)

 水力発電というと、例えば通称「くろよん」で有名な富山県の「黒部川第四発電所」など、巨大なダムを伴った大型発電所をイメージされる読者が多いだろう。これらの水力発電所の出力(発電力)は数十万キロワット(kW)に及ぶ。

 これに対して「小水力発電」は一般に大きなダムを伴わない1000kW未満の小規模な発電であり、「流れ込み式発電所」とも呼ばれる。これは大型水力発電所の約1000分の1程度の出力である。「そんなに小さな発電所で何ができるのか?」と思われる読者も多いだろう。

 だが、1kWの電力は現在のオール電化の世帯であっても1~1.5世帯分を賄うことができる。つまり1000kWの小水力発電所は、おおむね1000~1500世帯の集落で使用する電力を賄うことが期待できるのである。

 小水力発電の生み出す電力を国家的な規模感で眺めると、国内の全消費電力量の1%前後と考えられており、非常に小規模な電力供給である。

 しかし、前述のように、数百から数千世帯程度の地域集落にとっては十分すぎるエネルギーを供給する力がある。またエネルギーばかりではなくその地域にさまざまな富をもたらす。

 200kW程度の出力の発電所は300世帯ほどの集落の電力需要を十分に満たしてくれる。その電力を固定価格買取制度(FIT)で売電すれば、年間4000万円近くの収入をその地域にもたらしてくれる。小水力発電所を開発できるような地域の多くは農山村である。多くの地域は少子高齢化に見舞われており、徐々に減少していく人口を眺めながら将来を案じている。そのような地域における小水力発電開発事業は、自ら富を生み出し、地域に新たな収益と活路を生み出す「突破口」になり得る。


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