2025年3月23日付の フィナンシャル・タイムズ 紙は、欧州懐疑派や英国批判派でさえ、欧州に障壁のない防衛装備の供給網を創る意義を認めるべき時期が来たとするマーティン・サンドブの小論を掲載している。

欧州は、今や断固として欧州防衛の責務を果たそうとしている。その責務の一角は、防衛装備への予算支出を増加させることだ。
さらに大きな責務は、欧州全体が防衛装備の調達制度を、より効率的にすることである。昨今の欧州全体の安全保障に対する懸念により、英国は、防衛分野の域内協力が欧州全体の共通利益だと認識し、欧州諸国との対立の悪影響から防衛分野を隔離しようと意欲的だ。
欧州連合(EU)でも、効率的な防衛調達を妨げている貿易障壁を調査した。それによると、軍の移動を制約する過剰な官僚主義、通関手続きの不統一、防衛関連製品のEU内移転に対する過剰な規制等が障害の要因として挙げられている。
これらの障壁は、とりわけ英国にとって深刻である。英国のEU離脱(Brexit・ブレクジット)故、英国の規則が EU の規則から逸脱している結果、貿易、人の移動、データ交換、資本取引に関し両者の間に差が生じ、それが防衛を含む全ての経済分野の英国と EU 諸国との経済取引を妨げている。
防衛産業に関し摩擦のない市場を作るということは、防衛部門の活動において、企業が異なる規則や国境を越えるコストを気にせず活動できるようにすることである。物品だけでなく、サービスの提供、資本の流れ、技能労働者の移動についても障壁を最小限に抑える必要がある。換言すれば、EUの域内市場または単一市場と関税同盟の防衛装備版である。
英国がこれに対して神経を尖らせないようにするには、これを「防衛のための共通市場」と称するのが最善だ。全欧州の防衛産業についての共通市場の建設は、実際的かつ政治的な課題に直面する。