2025年5月16日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年4月21日

 フィナンシャル・タイムズ紙の4月5日付け社説‘Trump’s destruction of global alliances’が、「トランプは世界的な米国の同盟国網をも破壊するだろう。米国の過酷な関税攻勢の影響は貿易に留まらない」と述べている。主要点は次の通り。

(ロイター/アフロ)

 トランプは、自分の予測不可能性と取引主義を誇りにしている。こうした手法は、不動産ビジネスや債務再編ではうまく機能するかもしれないが、国際政治においてはトランプの取引主義は、米自身にも世界の安定にとっても、高い代償を払うことになる可能性が高い。

 米国が中国やロシアに対して有する大きな優位のひとつは、長年にわたって築かれた世界的な同盟国網である。日本、ドイツ、豪州、カナダ、英国といった国々は、米国の特定の政策について疑問を抱くことは多々あった。しかし最終的には、米国との同盟は共通の利益と価値観という堅固な土台の上に成り立っていると信じて、米国との関係を維持してきた。

 しかし、米国が始めた関税戦争とトランプ政権の敵対的な言動は、その信頼を根本から揺るがしている。

 関税によって打撃を受けた多くの政府は、経済への被害を緩和しようと、トランプと取引を結ぶために奔走する可能性がある。しかし同時に彼らは、米国による威圧的行為に対する脆弱性を減らすために、長期的な政策調整にも動き出すだろう。それはやがて、米国の富と力に長期的な影響を及ぼすだろう。

 経済的にも戦略的にも、様々な影響が考えられる。明らかな影響のひとつは、米国の武器輸出への打撃だ。

 欧州連合(EU)内では「欧州域内で製造される武器を買おう」という動きが強まっている。関税政策が頻繁に変わり、米国への依存が将来的に交渉材料として悪用される可能性があるならば、外国人投資家は米国への長期的な投資に非常に慎重になるだろう。

 さらに、トランプが同盟国を平気で敵視することによる地政学的コストもある。大統領の側近達は、米国は欧州の将来に対してほとんど戦略的な利益を持たないと信じているようであり、それゆえに大西洋同盟の国々の信頼を失っても気にしないのかもしれない。

 しかしトランプ政権は、中国の力をインド太平洋地域で抑え込もうとすることには非常に熱心だ。この目標はバイデン政権も共有したし、バイデンはアジア地域における米国の同盟・友好国ネットワークをうまく構築した。しかし、トランプの関税政策は、北東アジアにおける米の最重要同盟国―日本と韓国—に一撃を食らわせるようなものだ。

 日韓豪といった国々は、中国の力を抑制・管理するために米国と協力する意思を示してきた。それは、最終的には米が自分達を守るために戦ってくれると信じていたからだ。しかし、トランプの取引主義で、予測不可能、かつ敵意を強める行動は、その信頼を破壊している。


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