2025年12月5日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年4月21日

 カナダはEU加盟を推進するかもしれない。クアッドは米国抜きでも活動していくべきだ。日本は東南アジア諸国連合(ASEAN)との関係をさらに強化、中国との関係も一定の範囲内で円滑にしていくべきだ。欧州との関係強化が非常に重要だろう。

90日間停止した5つの理由

 なお、トランプは4月9日、同日に発動したばかりの相互関税の措置を90日間停止すると突然発表した。関税適用は約18時間だけだった。

 現場で輸出入業者は無駄に振り回されただろう。それは「停止」であって廃止ではなく、日本を含め10%の一律相互関税は適用される。

 しかし市場はここ10日近く大きく不安定になり、大きく変動していたので、世界は兎も角歓迎している。上げたり、止めたり、トランプのスタイルの真骨頂だ。

 一方、中国に対しては追加関税を125%に引き上げると発表し、報復の応酬になっている。しかし、世界では中国の行動の方が余程理屈に合っており、理解できると思う人々も多いのではないかと想像してしまう。

 なぜ、トランプは目玉とする相互関税の停止を決めたのか。種々の見方をまとめると、①株や価格、通貨の悪材料に加えて、金融市場の動揺が危機的になってきたこと(中国による米国債売却の観測もあり米国債を売る動きが拡大し、「金融危機につながるような兆候が出た」)、②危機感を深めたウオール・ストリート首脳等が政府に圧力をかけ始め、それを踏まえてベッセント財務長官が主導してトランプの説得に乗り出したこと、③関税政策につきナバロとマスクが公開で非難合戦をするなど、関税を強硬に推進するナバロへの批判が強まっていたこと、④共和党内にもトランプの経済ハンドリングにつき異論が出てきたこと、⑤多くの国が米国に協議を求めてきており、相互関税を一時停止しても、対中強硬関税を併せ発表することにより「トランプ交渉戦略の成功」として乗り切ることができることなどが背景になったようだ。

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