2026年2月28日(土)

家庭医の日常

2026年2月28日

病気や症状、生活環境がそれぞれ異なる患者の相談に対し、患者の心身や生活すべてを診る家庭医がどのように診察して、健康を改善させていくか。患者とのやり取りを通じてその日常を伝える。  
(SB/gettyimages)

<本日の患者>
T.C.さん、62歳、男性、アパレル会社役員。

 「最近、面白い臨床研究論文が公開されました。認知症になることを心配しているT.C.さんは、きっと興味があると思います」

 「えっ、どんな研究ですか。知りたいです。私は、物忘れしないうちに自分の脳のコピーを作りたいぐらいなんですから」

 「そうですか、ではお話ししますね。それは約13万人の人たちを最長43年間にわたって追跡調査したところ、1万人ぐらいが認知症になったんですが、カフェイン入り(つまりデカフェでない)コーヒーの摂取量が多いほど、認知症リスクの低下と統計的に有意な関連性があったんです」

 「つまり、コーヒーを飲むと認知症になりにくい、っていうことですね。そいつは良いことを聞いた!もともとコーヒーは好きなんで、さっそく今日からもっとコーヒーを飲むようにします」

 「ちょ、ちょっと待って下さい、T.C.さん。この研究では、認知症になりにくい原因がコーヒーであることは示されていないんです」

 「えっ、どういうことですか」

コーヒー/紅茶の摂取量と認知症のリスク

 今回話題にしている臨床研究は、今年2月9日にオンラインで米国医師会雑誌『JAMA』に公開された。ハーバード大学の公衆衛生大学院の研究者たちによって実施されたもので、米国の男女約13万人を最長43年間追跡した大規模調査に基づき、コーヒーと紅茶の摂取が認知症リスクや認知機能に与える影響を分析したものである。

 分析の結果、カフェイン入りコーヒーの摂取量が多いほど、認知症の発症リスクが統計学的に有意に低下し、主観的な認知機能の低下も抑制されることが示された。

 具体的には、1日あたり約2〜3杯のカフェイン入りコーヒーの摂取で最も顕著なリスク低減が確認された。同様の傾向は紅茶(1日1〜2杯)でも見られたが、デカフェの(カフェインを含まない)コーヒーでは認められなかったのだ。

 この研究の価値は、今までコーヒーと紅茶の摂取量と認知機能との関連を示す決定的なエビデンスがなかったところに、カフェイン入りとデカフェとを区別して調査した点にある。


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