2026年2月21日(土)

脳が長持ちする会話

2026年2月21日

漫画家・コラムニストで『世界はハラスメントでできている』(光文社新書)の著者である辛酸なめ子さんと、認知症予防研究者で『脳が長持ちする会話』(ウェッジ)の著者である大武美保子さんが、現代における脳の健康とコミュニケーションについて深掘り対談。昭和世代の「板挟み」感情や情報過多時代の脳のケア、認知症への不安、そして脳を長持ちさせる具体的な会話術から食事・睡眠・アウトプットの重要性まで、多岐にわたるテーマを2回にわたって語り尽くします。心身ともに豊かに生きるためのヒントが満載です。

脳を長持ちさせることが、会話にも効く

辛酸: 大武さん、この度は『脳が長持ちする会話』のご出版、おめでとうございます。実際に読ませていただいて、脳の機能だけでなく、会話術の本としても非常に読み応えがあると感じました。脳を長持ちさせることで、結果的に人間関係も円滑になりそうで…。

大武: ありがとうございます。なめ子さんは『世界はハラスメントでできている』をはじめ何十冊も出されてますよね。世の中には「人とうまくやるための本」が本当にたくさんあります。ただ、この本はそこを直接のゴールにするというより、「どうすれば脳が長持ちするか」を追究しています。その結果として、周りの人とも心地よく過ごせるようになるのではないか、という考え方なんです。

辛酸: 確かにそうですね。最近、40代、50代くらいから認知症予防を考えなければ、といった話を聞くことも増えました。骨密度を測ったりして、「そろそろ自分の体をケアする時期が来たな」と思う瞬間があって。

大武: 脳の健康は、特別な訓練以前に、普段どんなふうに人と関わるかが非常に重要です。そのため、本書ではいわゆる会話の「技術」というよりも、心の守り方や、会話で負担を増やさない聞き方を扱っています。

 たとえば、「相手の言葉にカギ括弧をつけて聞く」というのも、その一つです。相手の言葉をそのまま受け止めすぎずに、「いまこの人はこう言ったんだな」と一歩引いて聞く。これはちょっとしたことですが、こうすることで、会話で消耗しにくくなります。

辛酸: 会話が少ない人と一緒になって気まずい時って、どうしたらいいのだろう、と思うことがあります。何か質問したほうがいいのかなとか、「そういえば」と切り出すべきかなとか…。

大武: 質問するのも良いですし、もう一つの方法は「ネタを溜めておく」ことですね。ものすごく立派な話でなくても構いません。些細な話でも「後でこれを話そう」と思っておくと、いざという時に助けになります。

辛酸: 「最近どう?」と聞かれると、いきなりだと困ることがあって…。答えに窮することがあります。

大武: 答えが出てこないこと自体は、心配しなくていいと思いますよ。たまたま何も思い浮かばない日もありますから。ただ、たとえば「丸1年、特に何もない話が続く」といった状態になると、少し気にしたほうがいいかもしれません。

辛酸: 丸1年。

大武: だんだん昔のことしか話すことがなくなる可能性があるからです。年配の方には、昔の自慢話を何度も繰り返す方がいらっしゃいますよね。

辛酸: あります。常に同じ話をしている、というような。若くても昔の自分の栄光のエピソードを延々話したり送ってくる人がいますよね。それはただ承認欲求が強すぎるからかもしれませんが……。

大武: もちろんそれ自体が悪いというより、頭の働きとして「アップデートが止まっている」状態になっていないか、ということなんです。新しいことを覚える機能は衰えやすいと言われますから、日常の中で自然に使えているかどうかは大きい。

辛酸: なるほど。過去の自慢だけでなく、最近の楽しい話題もできるようになればいいですね。

大武: だから、「アップデートしよう」と力むより、「思わず興味を持ってしまう」ものを生活の中に取り入れる、というほうが現実的かもしれません。興味が動けば、脳の覚える回路は自然と使われますから。


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