人生100年時代と言われています。中高年期以降、高齢になればなるほど気がかりなのが、認知症ではないでしょうか。高齢者がもっともなりたくない病気であり、親に一番なってほしくない病気でもあります。でも、脳の中で何が起きているかは外からは見えず、認知症になるかならないかは、誰にもわかりません。
しかし、外からは見えないはずのその人の脳は、「会話」を通して見ることができます。普段からこういう会話ができていたら、この程度の認知機能が保たれているはずだ、ということがこれまでの研究で明らかになっています。会話には脳の健康度合いが反映されるのです。本連載では、脳科学の知見や最新のテクノロジー、AIの技術を集結させて考案された「脳が長持ちする会話」のコツをお伝えします。
*本記事は『脳が長持ちする会話』(大武美保子、ウェッジ)の一部を抜粋したものです。
しかし、外からは見えないはずのその人の脳は、「会話」を通して見ることができます。普段からこういう会話ができていたら、この程度の認知機能が保たれているはずだ、ということがこれまでの研究で明らかになっています。会話には脳の健康度合いが反映されるのです。本連載では、脳科学の知見や最新のテクノロジー、AIの技術を集結させて考案された「脳が長持ちする会話」のコツをお伝えします。
*本記事は『脳が長持ちする会話』(大武美保子、ウェッジ)の一部を抜粋したものです。
失敗談は最高のネタ
寄席でとても面白い「マクラ(枕)」を聞いたことがあります。マクラとは、本題に入る前の小話のこと。その日の演目の布石になるような話題や、今まさに世間が注目しているであろう時事ネタなどを盛り込み、観客の気持ちをほぐし落語の世界へいざないます。マクラの反応を見てその場で演目を決める噺家も多いと聞きます。
そのマクラとは、「鳩に100円玉を投げ付けている人がいた」という話でした。投げ付けている人に何をしているのかと尋ねると、「鳩のエサ100円と書いてあるでしょう」と答えたそうです。見れば確かに「鳩のエサ100円」と貼り紙がある。字面だけ読めば「鳩のエサが100円玉」と読めなくもないけど、いやそれは違うよね、変だよね、と。
このマクラでは、カン違いによっておかしみが生まれていることに噺家さんが気づいたことで、高座での笑いに転換されました。
笑いというのは、まず、これはこうあるべきという思い込みのようなものがあって、そこから何かしらの理由やたまたまの偶然が生じて、本来のあるべき姿からズレてしまったときに生まれます。
日常の中でそのズレに気づけると、頭がどんどん柔らかくなります。私たちの日常で起こるズレとは何かというと、「失敗談」です。