2024年12月7日(土)

一人暮らし、フリーランス 認知症「2025問題」に向き合う

2024年8月9日

 前回(『認知症の将来推計が大幅低下? 健康意識の高まりと生活習慣病コントロールに活路あり』)から、『認知症高齢者の将来推計』を見ている。

 今年のGW明けに厚生労働省が発表した最新の『認知症高齢者の将来推計』によると、団塊ジュニア世代が65歳以上になる2040年に認知症患者は584万2000人になるという(65歳以上人口のおよそ15%)。また、認知症の前段階とされる軽度認知障害(MCI)は612万人(同15,6%)で、両方を合わせると、「65歳以上の3人に一人が認知機能に関わる症状がある」時代がやってくる。

 発表の元となった調査からは、「2022~23年の認知症の有病率は、厚生労働省により報告された2012年の認知症有病率と比べると、低下傾向を認めた」こともわかっている。調査を担当した九州大学の二宮利治先生によると、「MCIから認知症へ進展した者の割合が低下した可能性が考えられる」という。

 そこで今回は、MCIから認知症に進展させないために「なにかできることはあるのか」、さらに認知機能をキープするために、私たちはそもそも「いつからどんなことを行えるのか」について、国立長寿医療研究センターの桜井孝先生にお伺いしながら考える。

(Eva Almqvist/gettyimgaes)

認知症に移行させない

 お話を伺う前に、MCIと認知症について改めておこう。

 国立長寿医療研究センターが作成・発行した『あたまとからだを元気にする MCIハンドブック』(以下、ハンドブック)によると、認知症には「一人暮らしが困難なほど認知機能が低下した状態」という定義があるという。

あたまとからだを元気にする MCIハンドブック(ウェブ版)』は、国立長寿医療研究センターHPからDL可能。国立長寿医療研究センター (ncgg.go.jp)

「お金の扱いや、服薬や食事、生活の様々なことを一人で行うことが難しい状態です」

 一方、軽度認知障害(MCI)の人は、「認知機能に関して低下を感じている、同じ年代の人と比べて認知レベルが低下しているが、基本的には日常生活を正常に送ることができる状態」を指す。

「ただし行きなれている場所に行ったり、使いなれた機械は使えても、新しい場所や機械は苦手になります。日常生活も、どうにか送れるものの、テキパキと行うことは難しくなっている状態です。認知機能は年とともに低下していきますが、MCIの人は認知機能のレベルが年相応よりも低下してしまっている状態なのです」

『あたまとからだを元気にする MCIハンドブック』より

MCIから認知症になるのは1年で1割程度

国立長寿医療研究センター・研究所長の櫻井孝先生

 MCIは認知症の前段階であるとされているが、MCIの人が必ずしも認知症になるわけでない。

「医療機関でMCIと診断された方が認知症になるのは、1年で5~15%くらいです。その他の人は、MCIのレベルに留まる人と、年相応の正常レベルに回復する方もいます。MCIの段階で、食事に気を使い、運動や認知トレーニングをするなどして生活を改善すれば、健常な状態に戻る可能性が高くなります。もしくは、認知症へと進む速度を遅くすることができるかもしれません」(国立長寿医療研究センター・櫻井孝先生、以下同)。

 櫻井先生には、連載第5回(『リスクを低減する行動とは?(前篇)』)と第6回(『リスクを低減する行動とは?(後篇)』)で、認知症リスクを低減するための行動について教えていただいた。

 当時伺ったお話では、「認知症リスクを低減するための行動を取るにあたっては、『病気の予防と管理』のほか、『運動・食事・社会生活(他者との交流)』を3本柱として日常生活に取り入れるのが大事とのことだった。

『あたまとからだを元気にする MCIハンドブック』より

「認知症のリスクを低減させるためには、5tipsといわれる要素があります。運動、食事、社会参加、生活習慣病の管理、認知トレーニングの5つです。私どもでは、この5つを介入させる研究を行い、その結果、複数(2つ以上)の活動を行うことに意義があるとわかりました」


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