2024年11月22日(金)

一人暮らし、フリーランス 認知症「2025問題」に向き合う

2024年1月12日

認知症人口は、2025年には700万人になると言われている(厚労省「認知症高齢者の将来推計について」より、認知症施策 |厚生労働省 (mhlw.go.jp)。この連載では、認知症を回避するためにできることはあるのか、また、認知症対策として今、どのようなことが行われているのかなどについて、様々な現場に足を運びながら見ていく。なお、筆者の立場は、「離れて住む実家の母の認知症を防ぐこと」。よって、対策を見ていく際には、「どうすれば自分以外の人にその対策を行ってもらうことができるのか」も合わせて考えていきたい。

運動にリスク低減効果あり!

(Neliakott/gettyimages)

 前回から、国立研究開発法人国立長寿医療研究センター・研究所長の櫻井孝先生にお話を伺いながら、「あたまとからだを元気にする MCIハンドブック」(以下、ハンドブック)を見ている。

 前回は、「認知症の原因疾患」と「生活習慣病・病気」と認知症の関係を見た。今回は、認知症リスク低減の3本柱とも言える「運動・食事・社会生活」の具体的な内容と、その他の要素を見ていく。

 まずは運動から。

 ハンドブックによると、「認知症になってしまった方の13%が運動不足に関連するとされており、この運動不足の割合が10%減少すれば全世界で38万人の認知症を予防できる可能性があることが示されている」という。さらに、「認知症ではない方が5年後に認知症になる原因を調査したところ、定期的な運動をしていた方はそうでない方に比べて認知症のリスクが31%低いことが示された」というのだ!

「運動が大事」というのは、誰もが薄々感じている事だろうけれど、こうして数字で表されると本気で取り組まねばと気持ちが引き締まる。

国立長寿医療研究センター・研究所長の櫻井孝先生

 運動によって「神経栄養因子」と呼ばれるたんぱく質が増え、脳の容積も大きくなることがわかっているのだとか。

「加齢により、脳は少しずつ小さくなったり機能が低下したりしますが、運動をすることで、脳の血流量が増加したり神経細胞が増えていきます」(櫻井先生、以下同)

 こうなると気になるのは、運動の頻度や強度だ。ウォーキングなどの有酸素運動と筋トレなどの無酸素運動を組み合わせるのがベターらしいが、「ハードな運動でなく散歩程度のものでも、週3回以上続けて行えば、運動習慣のない人に比べて約33%が認知症になりにくいことがわかっている」という。

 また、運動課題と認知症課題を両方同時に行い、心身の機能向上を目指す「コグニサイズ」という取り組みでは、頭を使いながら運動を行うことで脳萎縮の改善が見られたという報告があるとか。単に運動するだけでも良いが、「数を数えながら」「引き算しながら」「しりとりしながら」行うと、より良いのかもしれない。

食事栄養は?

 続いては、食事について。基本的には「いろんなものをバランスよく食べること」が言われているのだが、具体的な内容としては「季節の野菜や果物、魚などの抗酸化あるいは抗炎症作用をもつ食品や栄養素が、認知症発症予防に有効と考えられています」ともある。

 「いろんなものを」というのが、実は私自身、できていないので、かなり頭が痛い。健康をそこそこ意識して生きてきた気はするものの、頭で考えがちなので、「炭水化物取った、タンパク質取った、野菜取った」などと主な要素だけで考えがちで、例えばお肉なら「鶏肉食べたからOK」として、同じ食品が続いてしまうことはザラ。しかしハンドブックを読んでハッとさせられたので、以下に引用しておこう。

「私たちの脳の重さは体重の2%程度(1400グラム程度)ですが、総エネルギー摂取量の20~25%に相当する大量のブドウ糖を日々消費しています。またビタミンB群や葉酸、カルシウム、亜鉛などは脳の代謝や情報伝達物質として働きます。近年では、脳内には様々な栄養素の受容体が存在することがわかってきました。さらに腸と脳は互いに関連しあうと考えられ、日々の食事は代謝や免疫、内分泌、神経系を介して、脳の構造やその機能に深く関わっています」
 
 ……そうなのだ。結局、いろんな栄養素を良いバランスで取ることが必要なのに、私の場合、栄養学的な「タンパク質カテゴリー」にあるものをひとつ取っただけで満足してしまったりする。そして、たまに調べると、「豚肉にはビタミンB1が多い」とか、「牛肉では、鉄分や亜鉛が多い」などと知り、「タンパク質」要素しか見ていなかった自分を猛省したりする。

「いろいろな食品を摂取している人(=食品摂取の多様性が高い人)ほど栄養摂取状態は良好であり、認知機能低下が抑制されている」というハンドブックの言葉を改めてかみ締めたい。


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