認知症人口は、2025年には700万人になると言われている(注・1)。
そんな話をいつからか、耳にするようになっていた。しかし、それはもう少し先の、未来の話だとも思っていた。が、実際にはあと1年と少しで「その時」はやってくる……というより、あと1年と少しで急に患者が増えるわけはないので、こうしているたった今現在も該当者は増え続けているのだろう。
私がこの大き過ぎる問題を「自分事」として捉え始めたのは、私にとってこの春、正に「自分事」になったからである。実家の母にこのところ、不安に思える兆候が感じられ始めたと聞いたのだ。
母には、絶対に認知症になってほしくない!……いや、ならないのが無理だとしても、発症をできるだけ遅らせたいし、万が一、発症することになったとしても進行をできる限り緩やかにしたい……と、思った。
そこで、私は認知症を回避するためには何をすればいいのかを調べてみることにしたのである。
この連載では、今後、認知症患者が急増していくと推測される中で、当事者や彼らをとりまく人たち、さらに、今は無関係の立場にある人でも「何かできることはないのか」、そして「何をしたら、この大きな問題に立ち向かうことができるのか」について考えていく。
きっかけは母の変調
まずは、私の状況から簡単に説明しておこう。
一人暮らしのフリーランスで、50代。実家には、現役で働く父と母、さらに実家近所には兄弟が家族と一緒に住んでいる。
実家を出たのは大学入学時だが、フリーランスかつ、独り身の気楽さで、年に数回帰省している。
が、それはコロナ前までの話で、コロナ禍では高齢の両親のいる家に行くことが憚られて、2020年から2年ほどは実家に帰らないでいた。そして今年5月、コロナが第5類感染症に移行したのを機に帰省した際に、実際の母の様子を知ったのだ。
もの忘れが多い、同じことを繰り返し聞く……等々は、家族から電話で聞いていたけれど、母自身から「簡単な計算が出来なかった」と聞かされた時には、流石にショックを受けた。
とはいえ、この段階で母が認知症になったと診断されたわけではない。
年齢による物忘れが増えただけかもしれないし、周囲が勝手に心配しているレベルなのかもしれない。
また、「この春」と書いたけれど、実際にはもっと前からの話だったのかもしれないし、長いコロナ禍が症状を進めてしまったのかもしれない。
いずれにしても、母は今、変化の時にあるらしい。
ならば、「今こそ対応を始めなくては!」と私は真剣に思った。というのも、認知症は「発症前後の行動こそが大事だ」と聞いたことがあったから。