2024年2月26日(月)

一人暮らし、フリーランス 認知症「2025問題」に向き合う

2023年12月29日

認知症人口は、2025年には700万人になると言われている(厚労省「認知症高齢者の将来推計について」より、認知症施策 |厚生労働省 (mhlw.go.jp))。この連載では、認知症を回避するためにできることはあるのか、また、認知症対策として今、どのようなことが行われているのかなどについて、様々な現場に足を運びながら見ていく。なお、筆者の立場は、「離れて住む実家の母の認知症を防ぐこと」。よって、対策を見ていく際には、「どうすれば自分以外の人にその対策を行ってもらうことができるのか」も合わせて考えていきたい。

年長者は自然とリードできる

 前回に続き、高円寺の「夕焼け散歩」をリポートする。

「じゃあ、外に出ていきますよ」という佐藤先生のよびかけで、参加者たちは順番に部屋を出た。

 集会所の前から歩き出して、良きところで解散するという。

 コースは、佐藤先生が参加者の体調や気温や天候などを見ながら回ごとに決めるそうで、「今日は、雨が降るかもしれないから高架下に向かうことにしようか」と先生が大きな声で提案すると、「じゃあ先生、この道はどう?」「あの通りなら、近いかもね」などと、参加者たちからも声が上がる。

 その一つひとつに「いいね」「へえ、そのコースは行ったことなかったかも」などと対応する先生を見ていると、この散歩は先生が一方的に指導しているものではなくて、みんなで一緒に作り上げているものなのだなあと思わされる。

 考えてみれば、それも当然で、先生が別の土地から来たのに対し、参加者には地元民が多いのだ。

 地元の人なら、自分の町を歩いていくわけだから、道に詳しいのは当たり前だし、ある意味「ホスト」でもあるだろう。そのためか、どんな年齢の人でも(というよりも年齢が上がれば上がるほど)ホスト度は高くなり、「ここは、前は貸本屋だったよ」「この抜け道は戦後からあるんだ」などと案内してくれる内容がいっそうてんこ盛りになる。

それぞれのペースで歩いていく

 30人程度の参加者に、5~6人のスタッフと、4人のギャル学生。

 歩く順番や速度に決まりはないものの、先を進む先生を追いかけて、それぞれが自分のペースで、話しながら、時に寄り道をしながら、アスファルトを踏みしめていく。

 体が弱い人には自然とスタッフが付き添い、元気な人には元気な誰かがそっと横に現れる。

 ずっと一緒に歩くわけではないけれど、つかず離れずの位置に「誰か」がいる。

 私自身は、誰一人知り合いがいないアウェイの参加者であったが、折々に「町案内をしてくれる人」が横に来たり、「このお花は○○というのよ」と花情報を教えてくれる人が来たり、しまいには、「ねえ、みこしを担がない?」と夏祭りの神輿に勧誘する人が現れたりまでして、孤独感は皆無だった。

 正直な話をすると、参加するまでの私は図々しくも「スタッフのお手伝いをしよう」、つまり、「お年寄りの補助をしよう」というようなつもりでいた。しかしふたを開けてみれば、もてなされたのは私の方で、いろんなことを教えてもらったり、話しかけてもらったりして、年上の人の「先輩力」に助けてもらうばかりだった。それは最近では体験したことがなかった「異体験」だったので、一度の参加ながら、私の中の「何か」が彩られたようにも思えた。

誰かと歩くことの効果

 佐藤先生とすれ違った時、先生は楽しそうに言った。

「こうやって、一緒に歩くっていいでしょう」と。

 元々、運動によるリハビリ効果を研究していた先生は、運動することがいかに心身の機能回復に意義があるかを検証していたという。が、ある時、「運動する」だけでなく、「誰かと運動する」ことがいかに心身に良い影響をもたらすかということに気がついた。

「歩くこともそうなんです。元は、東日本大震災の時に、運動不足解消のために『歩くプロジェクト』を発足させたのですが、プロジェクトを進めるうちに、単に歩くのではなく、誰かと歩くことが大事なんだと思うようになりました」

帝京大学・佐藤先生

 誰かと一緒に歩くと、新しい出会いが生まれる。

 自分のことばかり考えていた人も、他の人や地域のことを考えるようになり、誰かのためにがんばったり、地域活性に尽くすようになっていく――そんな効果があるという。


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